2016年2月3日

感動を与えて逝った12人の物語


終末医療に携わる医師によって書かれた11人の患者にまつわる物語。

あれ? 12人目は?

それは、あなた自身である。

と、ちょっとクサイ締めくくりがなされている本書ではあるが、中身はそれぞれに考えさせられることがあって面白かった。分量は少なめで、ゆっくりした時間があれば一日で読み終わる。

2016年2月2日

貧困の原因について社会制度の責任論に寄っているので、読んでいて、なんとも言えないモヤモヤ感がつきまとう 『現代の貧困』


当院の精神科患者には経済的に貧しい人が多い。まず生活保護受給者の割合が高い。正確な数字は把握していないが、外来の約2割くらいだろうか。生活保護を受けていなくても、障害年金だけの「貧困」と言える生活をしている人たちもけっこういる。そうしたこともあって、本書を手にとった。

著者は、
「長い人生で、絶対に貧困にならない人、一時的に貧困に陥る人、そして常に貧困に固定されている人がいる。若い一時期に貧乏を経験することは悪いことではない」
と言っており、それには俺も賛同する。若さゆえの体力と気力があれば、貧乏暮らしも面白いものだ。俺にしても、九大経済学部時代の家賃1万5千円のアパート暮らしは良い思い出である。

著者が問題視するのは、固定化された貧困である。そして、著者の意見としては、こうした貧困の固定化はとにかく社会制度に問題があるということだが、果たして本当にそうなのだろうか? 例えば貧困の原因として低学歴が挙げられており、親の貧困が原因で教育を受けられず、そのせいで自らも貧困に陥り、そして貧困が連鎖していく、固定化する……。確かにそういう人もいるだろうけれど、いわゆる低学歴の人たちの中で、純粋に本当に「貧困が原因」で高校への進学を諦めたという人はどれくらいいるのだろうか?

貧困の全てが自己責任と言うつもりはないが、全てが社会制度の責任ということもないだろう。本書はかなり社会制度の責任論に寄っているので、読んでいて、なんとも言えないモヤモヤ感がつきまとった。

2016年1月28日

映画と原作はまったく別物で、原作のほうが断然良い 『黄泉がえり』


草薙剛が主演をつとめた同名映画の原作である。映画のほうはラストがトンデモなくグダグダだったせいで、「終わりダメなら全てダメ」の典型的な映画だった。7年前にDVDで観たが、時間を大いに損したという感覚が強かった。そういうわけで、まさか原作を読むことがあろうとは思いもしなかった。

どうして原作を読む気になったのかというと、それは原作者が梶尾真治だと知ったからである。梶尾真治と言えば「エマノン」シリーズで、これは俺自身がハマって読んでいる。だから、もしかしたら『黄泉がえり』は原作と映画が全然違うのではないか、原作のほうはもっと面白いのではないか、そういう気持ちがむくむくとわき起こった。

そして読んでみた感想は、やはり別物、似て非なるものであった。だから、映画のほうを楽しめた人は、逆に原作を読んでもつまらないと感じるのかもしれない。面白かったのは文庫本の解説だ。コラムニストの香山二三郎が、 映画について、
ファンタジー一色に変更されており、原作とは違った黄泉がえり
と書いている。きっとこの人は原作のファンなのだろう。そして映画のほうは、明らかな批難こそしないものの、あまり面白いとは感じなかったんだろうなぁ。

2016年1月27日

動物学者が、動物学者としての目で人間を観察 『裸のサル―動物学的人間像』


「裸のサル」とは言うまでもなくヒトのことである。ヒトは、動物として、どうして今のような生態、生活、文化を持つようになったのか。動物学者のデズモンド・モリスが、動物学者としての目で人間を観察し考察した本。

書かれたのが40年くらい前だからか、内容すべてが新鮮ということはなく、むしろ「ふーん、確かにそういう話は聞いたことがあるな」というものだった。これは裏を返せば、そんな昔に考察されたものが、現代において常識・雑学・トリビアのようなものとして生き残っているということだ。凄い。

そして新鮮でこそないものの、中身は充分以上に知的好奇心が満たされて面白いものだった。絶版のようなので中古で読むしかないのが残念。

2016年1月19日

製薬会社の人たちの行動観察をする時の参考にもなって面白い 『クチコミはこうしてつくられる―おもしろさが伝染するバズ・マーケティング』


クチコミに関してあれこれ分析し、さらに活用方法まで書いてある。マーケティングや商品開発、流通に関わるビジネスをしている人にとっては役に立つ話が多いのではなかろうか。

製薬会社のMRさんらを対象とした勉強会での講師依頼を受けている。といっても、実際のところはあちら側の営業活動の一環だろう。こういうのは丸め込まれないようにと意識はしていても、ついつい巻き込まれてしまうものだとは思うが、逆にこちらの希望や意図を伝える機会にもなりそうな気がする。

時々こういうビジネス関係の本を読むのは、精神科の診療や病棟運営の役に立つし、製薬会社の人たちの行動観察をする時の参考にもなって面白い。