2016年7月7日

戦争は過去形ではなく、いつも現在進行形 『ぼくの村は戦場だった。』


2012年、シリアでの取材中に政府軍の銃撃によって命を落としたジャーナリスト、山本美香によるルポタージュ。

女性で戦場取材に出かけるのは凄いことだと思う。男女差別というわけではなく、たいていの軍隊は男性中心で、まして前線ともなるとほとんど男である。そこに飛び込む女性には、トイレや入浴、着替え、性被害など、いろいろな面で不安がつきまとう。そういう不安に加えて、常に命の危険があるわけで、神経がすり減ってしまいそうだ。

そんな心身の疲労が蓄積して、あと少し早くリタイアしていれば死なずに済んだのかも……、というのは部外者が考えるだけで、きっと本人には知りたいこと、伝えたいことがまだまだたくさんあって、リタイアなんてとんでもないという感じだったのかもしれない……。

山本さん、あなたが亡くなってから、シリアはますますひどいことになっているようです。いや、シリアだけでなく、どこもかしこも内戦・内紛だらけ。また、あなたがイラクで見て記録したアメリカ軍の横暴は、日本人があまり知らない事実ですが、そんなアメリカでは大統領選でドナルド・トランプという仰天候補が人気を集めています。こんな現在の世界を、あなたがどう捉えて、どう発信するのか、読んでみたかった。あなたが亡くなった当時、あまりあなたのことを知らず、大して気にも留めなかったけれど、今こうして本を読んでみて、日本にとって惜しい報道人を喪ったのだなと実感しています。

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