2012年1月6日

『救急薬剤師養成へ -災害現場で活動』 というニュースを読んで

実際に医療派遣されて、薬関係で困ったことは、誰にどの薬をどう処方するか、ではない。

震災から一ヶ月半後、俺は南三陸町へ派遣された。赴任した診療所は、各県から交代でチームが派遣されていて、それぞれに自分の病院で採用されている薬を持ち寄っていた。同じ薬でも名前が違うものもあるし、ジェネリックも多かった。大混乱、とまではいかないまでも、俺より前のチームの混乱が感じられた。薬の名前は調べれば分かるが、新しいジェネリックはちょっと古い本には載っていない。

大量の薬は大雑把に分類されていたが、完璧とは言い難く、俺たちは薬を整理しながら診療した。この薬調べと整理にはけっこう時間がかかってしまい、それがストレスになった。ある日、他チームの薬剤師が合流したら、薬の整理がとっても早かった。その姿を見て、単に薬の知識があれば良いというわけではないと感じた。うまく言えないが、その人の持つ「整理力」というものだろうか。

薬局には、薬を分類するための棚もラベルも、箱も袋もある。災害の現場には、それらがないか、極端に不足している。そういう状況で、かろうじて残っているものを利用して整理していく。災害現場での整理力には、かなりの臨機応変さが求められる。あの混乱した場で、全国から送られた大量の薬を分類していった薬剤師らの活躍には頭が下がる。

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派遣された医師は専門分野以外の薬を処方する機会が多すぎる。こちらはかなり気をつけているつもりでも、用量が多め、あるいは少なめの処方をしてしまうことがある。そういうのを厳密にチェックして指摘してくれた薬剤師らにも、感謝の念を禁じえない。もともと、薬剤師は貴族に毒が盛られていないかをチェックするために生まれた職業と聞く。薬の最終チェック段階に目を光らせるガードマンとしての仕事が本業に近いと思う。

災害現場で活躍することを目的とする薬剤師は、薬の知識はもちろんのことだけれど、持ち寄られた大量の薬の整理とか、誤処方のチェックとかをガッチリ固めてもらうほうがありがたい。薬の知識はバッチリあります、でも整理が下手、チェックが苦手、というのでは連携できない。

こういう一見すると当たり前で些細にすら思えるようなことこそ、あの現場からのフィードバックをもっと活かすべきだと思うのだが、今のところ、派遣を命じた県からそういうオファーは一切ない。

岡山大薬学部は、「救急薬学分野」の研究室を2月にも新設し、災害現場で医師とともに救急医療に携わる薬剤師の養成に全国で初めて乗り出す。
災害時には多くの患者の薬剤を素早く選ばねばならないほか、東日本大震災の際にはカルテを失った慢性疾患患者への投薬についての判断も求められた。今後、こうしたケースに対応できる薬剤師を育て、東海、東南海、南海地震などに備える。
岡山大学病院は、大震災後、岩手県陸前高田市などに医師や看護師を派遣。薬剤師も同行した。被災地では、カルテや薬手帳を津波で流された患者が多かったことから、薬の飲み合わせなどに高度な知識を持ち、医師に的確に助言できる薬剤師を育てることにした。
同病院が、重症患者を受け入れるために昨年10月に開いた「3次救急センター」で、救急薬学分野を学ぶ学生や大学院生の実習を行う。将来は、病院や薬局で働く薬剤師の再教育もする。

6 件のコメント:

  1. やっぱり、災害現場では効能別に薬を分けてたんですね。
    薬局では五十音順に並べてあるけど、薬局以外だとそのやり方だとやり辛いだろうなと気になってました。

    緊急時に臨機応変に動くにはどれだけ通常時にきちんと基本的な事ができているかが重要でもあると思うので、まずは基本的な事を完璧にこなせるようにならなきゃなぁ…

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  2. >あっこ
    効能別が良かったのか悪かったのか、ちょっと分からないんだよね。
    専門外の薬はよく分からないし、
    「これ飲んでいるんです」
    って見せられても、まず調べるところからスタートになることが多くて。
    で、そこから在庫があるかどうかを確認して、
    なかったら次に何を処方するかを本で調べて、
    というう感じで、2重3重に手間がかかることがあった。
    50音だと、在庫があるかどうかの確認がパッとできるよね。

    でも、薬に詳しい内科の先生だったら、診察して薬さがす時には、
    効能別のほうが探しやすいはず。
    実は災害支援では薬剤師が不足していたんじゃないかと思うくらいだよ。
    勤務薬剤師の数って、医師より断然少ないでしょ、多分。

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  3. 効能別の方がお医者さんは薬を探しやすいかなと思ったのですが、専門外だと厳しいですね…薬剤師さんだと処方箋見て薬を探すので50音の方がやりやすいです。

    薬剤師は少ないですね。自分の住んでる地域ですら求人が絶えないですから、災害派遣に回せる余裕もないのが現状なのかもしれません。今回の災害派遣では薬剤師さんは約2000人が被災地に入ったようですが、お医者さんに比べたらやはり少ないのかなぁ。

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  4. >あっこ
    延べ人数が2000人なら少ないかもしれん。

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  5. 3月11日から7月6日までの調査の資料で延べだと8000ちょいです。

    各県の派遣人数が載ってるのですが、うちの県は結構少なかったです…全体的に見ても薬学部がある県が派遣人数が多いわけじゃないってことが少し気になるところです。

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  6. >あっこ
    医師数は調べたけれど分からなかったよ。
    ある薬剤師さんは、確か自分の仕事をなげうって来ていたよ。
    それはそれで、責任ある行為と言えるのかという問題はあるけれど、
    強制的な派遣の俺からしたら、その気概は凄いなぁと感じた。

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