本書では、実際に戦闘した兵士たちへのインタビューや過去の記録などから、戦争における殺人や殺人拒否、指揮官と部下、殺す側と殺される側、その他の戦争にまつわるあれこれについて数多くのエピソードが記載されている。いくつか印象深かったものを紹介する。
第二次大戦で部下とともに全滅する道を選んだアメリカ軍の指揮官がいる。デヴェール少佐は日本軍と戦い、とうとう制圧される前に打電した最後の通信文には、ただ一文、こうあった。
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第一次大戦では、ホイットルシー少佐の指揮する部隊がドイツ軍に包囲された。この部隊は決して精鋭ぞろいではなく、寄せ集めの民兵集団にすぎなかったが、少佐は降伏を拒み、救出されるまでの5日間、次第に減っていく生存者を絶えず激励し戦わせ続けた。軍事史に残るほどの偉業を残せたのは、少佐の常人離れした不屈の精神のおかげだと生存者は口をそろえた。少佐は軍人に与えられる最高の勲章を授与された。そして、戦後まもなく、ホイットルシー少佐は自殺した。
同じく第一次大戦中のクリスマスには、戦争状態にあったイギリスとドイツの前線兵士たちが非公式に停戦し、防衛区域で平和的に会い、プレゼントを交換し、写真を撮りあい、サッカーの試合さえしたそうだ。
こうした悲劇的な話、勇気を与えられる逸話、考えさせられるエピソードなど具体例を丁寧にたどりながら、なぜ人は人を殺すのか、そして、なぜ人は人を殺さないのかということが考察してある。
安保法案がらみで戦争についての意見がかわされている今だからこそ、こういう本を読んでみるのも良いのではなかろうか。
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