83歳の寝たきりの父と二人暮らしの46歳男性が、父を放置して死なせた容疑で逮捕された。
寝たきりの父を放置し死なせた容疑 46歳会社員を逮捕
衰弱した父親を病院に連れていくなど適切な処置を取らずに死なせたとして、兵庫県警は25日、神戸市北区南五葉2丁目の会社員、五十川博之容疑者(46)を保護責任者遺棄致死容疑で逮捕し、発表した。容疑を認めているという。
神戸北署によると五十川容疑者は、父の甫(はじめ)さん(83)が8月15日ごろから寝たきりで衰弱した状態だったにもかかわらず放置し、死なせた疑いがある。「24日朝、仕事に行く前には父は生きていた。夜帰ってきたら息をしていなかった」と話しており、自ら119番通報したという。
五十川容疑者は甫さんと2人暮らし。甫さんが寝たきりになった当初はおかゆやうどんを食べさせていたが、次第にスポーツドリンクなど水分だけになり、おむつも長期間替えていなかったという。
http://www.asahi.com/articles/ASH8T3JWMH8TPIHB00B.html(朝日新聞 2015年8月25日11時21分)
同じような環境の家族はたくさんいる。仕事を休んで病院に連れて行っても、その一日で解決するわけじゃない。仕事もそうそう休めない。休むと給与が減るかもしれない。給与が減れば、自分も父も生活できない。
身も心もくたくたになって、どうしていいかも分からない、判断できない、あるいは福祉に相談したり介護認定を受けたりという知識がない。この男性の逮捕は法律的に仕方がないのかもしれないが、それでも俺はこの男性への同情を禁じ得ない。
40年後、自分が寝たきりの80歳になって、すでに40歳をこえた娘が独り身で俺と二人暮らしをしていて、俺の介護と仕事を両立させてヘトヘトになっているとしたら……、そんなことを想像すると、この逮捕された男性と父親のことが切なくて切なくて仕方がない。
衰弱死したお父ちゃんは可哀そう。それと同じくらい、お父ちゃんを衰弱死させてしまったこの男性も可哀そうだよ。
まったくの想像だけれど、
「お父ちゃん、ごめんな、仕事行ってくるわ。ポカリ置いとくから、ちゃんと飲みぃや。暑いからエアコンも間違って消さんようにな。ようやく明日休みがとれたから、明日は病院に連れてったるわ」
帰宅して……、冷たくなった父のために119番。そして逮捕。
こんな光景を思い浮かべると泣けてくる。
ところで、新聞記事には、「スポーツドリンクなど水分だけになり」と書いてあるが、人は衰弱すると誰でも食欲が落ちる。まして84歳ともなれば、食事が喉を通らなくなるのは珍しいことではない。それから記事をもう少し詳しく読むと、亡くなった父は8月15日に寝たきりになり、24日に死亡している。10日間である。何年もネグレクトしていたわけではない。夏風邪かな、くらいに思っていたかもしれない。水分は摂れるから大丈夫かな、くらいの感覚だったかもしれない。
「おむつも長期間替えていなかった」とも書いてあるが、息子一人で仕事もしながらの介護・看護である。1日2回、多くて3回が限度ではなかろうか。疲れきって1日1回、あるいは「今日はもう勘弁して」となる日だってあったかもしれない。上記したように、父は寝たきりになって10日後に死亡している。ということは、オムツを最後に替えてから、どんなに日にちが経っていたとしても10日である。読んだ人が「長期間」でイメージするのはどれくらいか分からないが、新聞記者は具体的日数まで調べて書いても良かったんじゃなかろうか。
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