2015年10月9日

肥満は伝染する。 『つながり 社会的ネットワークの驚くべき力 』


肥満は伝染する。

こんなことを書くと反発する人がいるかもしれない。実際、2007年に本書の著者らが研究結果を発表した時には大反響が起こり、反論、批判のメールも多かったらしい。しかし、「肥満が伝染する」のは大規模なデータから様々な交絡因子を排除して得られた結論であり、またこの発表後にもいくつかの研究チームが別々の集団で肥満の伝染を確認している。

確かに日常生活において、太っている人の家族は太っていることが多い。これは食生活や遺伝のせいだろうと思っていたが、太っている人の友人も太っていることが多いのはなぜだろう。太っている者同士が集まる、いわゆる「類は友を呼ぶ」ということで一応の説明はできる。ところが、あるグループのうちの誰かが太ると、その人を除いたグループ内の平均体重が増加するという事実は「類は友を呼ぶ」では説明できない。その逆もあり、誰かが痩せるとグループ全体も細くなる。

「肥満は伝染する」というのはキャッチーではあるが、より正確には「行動(過食やダイエットなど)が伝染する」ということで、これは言われるまでもなく感覚的に理解できる。このことをもっと詳しく、もっと体系的に調べ上げてまとめたのが本書である。

他にも興味深い話題が豊富であり、この本をネットワークに関する入門書として読むのも良いし、人によっては自己啓発本としても活かせるだろう。ある人と他者とのつながりの数と質によって、その人の人的ネットワーク上の立ち位置が変わり、それは人生において大いなるプラスになるが、時にはマイナスにもなりうる。残念なことに、本書はどういうつながりが良質なのかを教えてはくれない。そういう安っぽい本ではない。読むと「つながりを意識する」ようになる。そして、これがきっと著者の狙いである。

ちなみに著者の一人・クリスタキスは内科医で、社会学者でもある。

2 件のコメント:

  1. 遅レスすいません。
    勤め人時代、30~40代の女性アルバイトが多数いました。
    で、そのうちの1人が、唐辛子ダイエットが成功したとかで、肥満体が見事に痩せた。
    そうしたら、他の女性アルバイトも、何らかの形で見事に痩せました。
    最初に痩せた女性は、好きな男性職員ができたかららしいですが、別の土台が良い太り気味のバイトが痩せた時は、職員が「あの女、痩せて、むっちゃエエ女になったやんけ!」と言ってました。
    私にとっては、まだまだ太く思えましたが。
    そのあたり、競争原理が働くのかなあ?

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    1. >瞬生田さん
      競争原理、友情、愛憎まじりあった、まさにネットワークがからんだ事例なのかもしれません。
      ちなみに俺は経済学部生時代に、100kgをこえた友人と3年間同居しましたが、体重は変わりませんでした(笑)

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