2017年5月2日

不眠に関する誤解や迷信を捨て、快適な睡眠を取り戻そう! 『8時間睡眠のウソ。』

精神科診療では「不眠」の訴えがとても多く、詳しく問診すると、いろいろなパターンの人がいる。

ある高齢男性は、内科で睡眠薬をもらっているのに不眠が続くという。
「何時に寝つくんです?」
「5時です」
「そりゃキツいですね。そんなに寝つけないんですか?」
「いや、寝つきは良いんです。ただ12時前に目が覚めて、それからが眠れないんです。7時くらいまで寝ていたいのに」
「え? 5時って、夕方の5時!?」
「はい」

驚くことに、この男性の場合、17時から翌日の7時まで14時間も眠りたいという希望があり、それが叶えられず「眠れない」という訴えになり、「不眠」を改善すべく内科で睡眠薬を処方されていたのだ! せめて21時に寝るよう説得したが、「漁師だったんで、(夕方)5時に寝て、(夜中)12時に起きて仕事するのが習慣だったから」と受け容れてくれなかった。薬を欲しがる男性に、薬ではどうしようもないことを説明して処方はしなかった。そんな診察を何回か重ねるうち、かろうじて21時ころの就寝にまでこぎつけ、それで「不眠」は大幅に減った。

ある中年男性は、一日にコーヒーを10杯以上も飲み、寝つけないからビールを数本飲むという。仕事はしていないので起床は遅い。この人には、コーヒーの量と時間に制限をかけ、禁酒を指示した。これで「不眠」はかなり改善した。ただし、こちらには薬物療法も要したが。

他にも挙げればキリがないくらい、「不眠」の背景にある「睡眠習慣のバリエーション」は豊富だ。


本書の著者は三島和夫先生。国立精神・神経医療研究センター部長である(平成26年時点)。睡眠に関する疫学、科学的な研究に基づいた正確な基礎知識が、読みやすく分かりやすく書かれている。思わず「そうなんだぁ」と人に話したくなるようなものもある。たとえば、「22時から2時の睡眠が美容に良い、というのはデタラメ」「人の体内時計が25時間というのは間違いで、日本人は平均で24時間10分(アメリカ人は24時間11分)」「寝つきやすい時間帯は個人差があり、50人で調べると最大で7時間も違う」などなど。

また、「不眠」と「不眠感、熟眠感」は一致しない、ということにも触れてある。家族の誰が見ても「メチャクチャよく寝ている」のに、本人だけが「寝た気がしない」というのは、診察室での日常茶飯事である。

「不眠」への耐性は人それぞれで、多少の不眠があってもパフォーマンスが落ちない人から、劇的に能率が下がる人までいるらしい。また睡眠には遺伝も関係しているそうで、本書でも遺伝子については紹介されていた。

統計的には、平均睡眠時間は30代で7時間をきる。45歳だと6時間半になる。これに対し、病院の消灯時間は21時である。スタッフの勤務時間や人員配置の問題で仕方ないのだが、入院患者が21時に寝て3時過ぎに起きてしまうのは当然で、これを「早朝覚醒」「不眠」と評価するのは気がひける。まして、睡眠薬をつかって起床時間を遅らせるというのは、果たして治療的と言えるのかどうか……、悩ましいところである。

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