店の冷蔵庫に入ったり、客に出す前のピザ生地を自分の顔に乗せたり、果ては客が調味料を鼻の穴に突っ込んだりと、悪ふざけ写真が話題になることが多い。そういうニュースを見て、
「どうして彼らはこんなに話題になっているのに真似するんだろう?」
と疑問に思う人と、
「こうやって話題にするから真似するんだ」
と憤る人といるが、きっとどちらも気づいていないことがある。
俺は新聞を購読している。
あなたはどうだろう?
俺は日経メディカルをチェックしている。
あなたはどうだろう?
俺はヤフーニュースを時どきチェックする。
あなたはどうだろう?
俺はCNNの日本語サイトも時どき見る。
あなたはどうだろう?
では、次に考えてみよう。
こういうことをやっている人たちは、どうだろう?
俺は新聞も日経メディカルもヤフーニュースもCNNも見ているが、あなたも同じようにこれら全部をチェックしているとは思えない。逆に、あなたがチェックしているサイトを俺が見ていないことも多いだろう。
そう、情報ソースには偏りがあるのだ。そして、こういうことをやっている人たちのことを想像してみると、彼らがいわゆる「ニュース系」のソースに目を通すとは思えない。
おそらく、彼らは知らないのだ。
同じようなことをした先人たちが、どのような目に遭い、どんな処分を受けたのかを。彼らのうち、先人たちの存在を知らない者はこう思っているのだろう。
「こんな面白いこと思いついて実行に移せるのは、自分だけ」
中には、ツイッターなどで「面白い!」として拡散された先人たちの画像を見て、俺も私もと真似てみた人がいるかもしれない。
「自分にだってできるもん!」
なんて感覚かもしれない。そしてそんな彼らが、その先人たちがその後どういう末路をたどったか、そこまでチェックするなんてことはないだろう。
断言できるが、彼らはニュースを見て真似しているわけではない。その逆で、独自の思いつきにしろ誰かの真似にしろ、ニュースを見ていないからこそ、こうまで無邪気にバカなことをやれるのだ。
では、彼らに「こんなことをしたら、大変なことになるよ」というメッセージを届けるにはどうしたら良いのか。それは、彼らが目にするだろうと思われるサイトや雑誌で取り上げることだ。今のように新聞やテレビニュース、ニュースサイト、2chまとめで取り上げたところで、意味があるわけないじゃないか。どうせ彼らは見ないのだから。
え? だったら、どういうところでアピールすべきかって?
俺に分かるわけないでしょ、こんなバカの大半がチェックしている媒体なんて。
ちなみに、こういうバカなことをする人が急に増えたわけではないと思う。今までは携帯で撮影して友人に見せたりメールしたりして笑い合っていただけのものが、ツイッターその他のSNSの登場によって、使い方を間違えて(?)拡散することが増えたからだろう。つまり、
「ここまで話題になっているのに、なぜ繰り返されるのだろう?」
という問いは的外れであり、
「どうしてここまで発見・発覚数が増えたのだろう?」
という問いのほうが、より真実に近づけると思う。
もしここまで読んで、
「いや、自分の世代にはこんなことなかった!」
なんて思うあなたは、結局、自分が情報ソースの一部にしか触れていないということに気づけていないだけであり、一歩間違うと彼らの仲間入りをする恐れだってあるのだ。