2018年8月2日

深いため息とともに読了する名著 『終りに見た街』


なんという凄い本だろう。
読了して、深いため息が漏れた。

いわゆるタイムスリップもので、第二次大戦中に子どもだった主人公が、1980年には少し歳の離れた妻と二人の子を持つ中年になっている。そんな彼が昭和19年にタイムスリップするのだが、本書の珍しいのは、スリップするのが彼だけでなく家族も一緒にというところ。さらには幼少時の親友と、その息子である高校生もタイムスリップする。

物語は、物のない時代を生きぬいた主人公とその親友が、飽食に慣れた妻や子どもたちを導いていく形で進む。妻も子どもも、慣れない粗食や物資不足、娯楽のなさにストレスを溜め、そのせいでときに爆発してしまう。それでも季節は過ぎていき、少しずつ、少しずつ、彼らの中では変化が起こっていく。

これ以上はネタバレになるので書きたくない。さすが優れた脚本家で、話の運びが上手く、それぞれの人物の描きかたも巧みで、シンプルな文章なのに状況も感情もよく伝わってくる。それだけにラストの衝撃が大きく、こんな名著を知らずに過ごしてきたことに驚いた。

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