2019年6月21日

断酒に関する自己評価の甘さについて

「酒をやめて、もう1年くらいです」

カルテを確認すると、3ヶ月入院し、退院して7ヶ月。つまり、確かに10ヶ月は酒を飲んでいないが、それは決して「1年くらい」ではない。
また、10ヶ月のうち3ヶ月は入院なので、社会生活での断酒は7ヶ月。

このように、断酒の自己評価は甘くなりがちである。

これは架空の一例であるが、このような自己評価をしている人は非常に多い。
「やめて、もう半年になる」と言っても、精神科での入院期間を除けば3ヶ月。その前に内科で入院治療を受けた期間も引けば2ヶ月ちょっとにしかならないということもある。

こういう自己評価をする人には、
「退院してからをカウントしましょうか」
そんなふうに伝えるが、
「飲んでいない期間」=「やめた期間」
と考えている人には、そう簡単にはしみこまない。

「飲んでいない期間」「やめている期間」「回復してからの期間」はそれぞれ別ものである。入院という環境のもとでなく、自らの意思で断酒しているのが「やめている期間」であり、酒を必要としない生きかたを再発見したときからが「回復してからの期間」と言えよう。

これを、どのタイミングで、どんな雰囲気で、どういう言い回しにして伝えるか。そういうことに創意工夫をこらすのが、精神科医という仕事の醍醐味である。

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