2019年6月11日

ピクサーを陰で支えた人による思い出 『PIXAR 世界一のアニメーション企業の今まで語られなかったお金の話』


ピクサー初の長編映画『トイ・ストーリー』が公開される少し前に、同社の最高財務責任者として就任した著者の立場から語られるピクサーの歴史。

スティーブ・ジョブズ、ジョン・ラセター、エド・キャットムルたちとともにピクサーを一流有名スタジオへと押し上げていく過程で生じる金銭トラブルを中心に描かれており、アニメの話はあまり出ないが、お金の話もジョブズらとの逸話もとても興味深く面白かった。

ジョブズはピクサーにもっと冷淡だと思っていたが、彼なりに愛情があったんだろうなぁ、なんて思いながら読んだ。

CG映画についての記述が面白かったので、少し長めだが引用しておく。これからCG映画を観るとき、こういう視点があると興味深さが増すだろう。
課題のひとつが、 文字どおり観客が目にするものすべて、 細かな点まで作り込まなければならない点だ。空について考えなくても実写の映画は作れる。 屋外で撮影すれば、そのときの空が映るからだ。背景のビルや樹木も、あるがままでいい。樹木には葉もついているだろう。その葉っぱを揺らす風も吹いていたりするだろう。だから、実写なら、背景に映り込む木の葉っぱについてあれこれ考える必要はない。だがアニメーションの世界には、空も樹木も葉も、もちろん、葉っぱを揺らすそよ風もない。なにも描かれていないコンピューターのスクリーンがあるだけだ。そこになにかを描きたいなら、こういうものをこう描けとコンピューターに命令しなければならない。
さらに難しい課題もある。現実世界で光や影はあって当然の存在だ。だから、「あそこに影があるのはなぜだ?」とか「壁のこっちには光が当たっていてあっちに当たっていないのはなぜだ?」と考えたりしない。ところが、ポートレートや写真で光の当たり方や影のでき方に少しでもおかしなところがあれば、すぐにわかる。違和感を覚えるのだ。だが、コンピューターアニメーションの世界には光も影もない。すべて作り込まなければならない。
ごくありふれたもの、たとえば肌はもっと大変だ。実写では、せいぜい化粧に多少気を遣うくらいで、特に問題となるポイントではない。肌は肌なのだから。これを描くとなると話はまるで違ってくる。色合い、体毛、しみ、しわ、風合いなどが微妙に違うし、そこに光が当たるとどうなるかも表現がとても難しい。だれも気にしないニュアンスだが、そこを無視するとものすごい違和感が生まれる。そういうデイテールのない肌は「色のついたゴム」 にしか見えないとエドは表現する。

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