2019年1月11日

ビッグデータへのビッグな愛を感じる(笑) 『誰もが嘘をついている ビッグデータ分析が暴く人間のヤバい本性』


「A/Bテスト」というのをご存じだろうか?

「無作為抽出比較対照試験」という長ったらしくて取っつきにくい名前を、グーグル社内でこう呼び始め、いまやインターネットマーケティングに定着した手法である。

たとえばブログの端っこに出てくる広告で、「ここをクリック!」と「いますぐクリック!」の2パターンを用意し、どちらのクリック率が高いかを調べる。この調査は、手間暇とお金がほとんどかからないうえ、膨大な数の対象者に無料かつ無意識で参加させることができる。

フェイスブックも同様のテストを行ないながら、フィードや広告のクリック率を高めようとしているそうだ。いや、フェイスブックに限らず、おそらくツイッターも、インスタグラムも、その他の企業も、こういうテストを取り入れることで、少しずつサイトを改善していき、自社サイトの中毒性を高めているのだ。

素直にすごいと思うと同時に、知らず知らずのうち依存性をどんどん強められているのは、ちょっと怖い気もする。だが冷静になって考えると、飲食物にしろ、本にしろ、音楽や映画にしろ、いかにして消費者をリピーターにするかというテーマで改良を重ねているわけで、グーグルはじめネット企業がやっていることはそれと大して変わらないのだ。おそらく、ネットでの「A/Bテスト」になんとなく抵抗感があるのは、そのテストが非常に安価であるにもかかわらず、直接的かつ強烈な効果を持っているからだろう。なんというか、「操られている」感がすごくするのだ。となると今度は、この抵抗感をどうやれば薄められるか、ということさえ「A/Bテスト」のテーマになるのではなかろうか。

「A/Bテスト」の深淵、おそるべし。

さて、本書のタイトルも副題も、「ビッグデータから得られた人間の本性」をテーマにしているように感じられるが、それはあくまでも導入に過ぎない。特に前半はセックスにまつわる話が非常に多いが、全てを読めば「ビッグデータを用いた社会科学の良質な入門書」というところ。まずは多くの人が興味を持ちそうな話題から入り、「A/Bテスト」をはじめとしてビッグデータがどう用いられているのか、そしてこれからどういうことができるのか、どういうことはやっちゃいけないのか、ということが論じてある。

著者の「ビッグデータへのビッグな愛」を感じるような本であった。

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