2017年4月28日

病院と施設

うちの母は「ボケたら施設に入れてくれ」と言うし、自分もボケたら家族に迷惑かけないよう施設に行こうと思う。でもいざ認知症になると、そんな決意も忘れちゃうだろうし、なんで自分が施設に行かなければいけないのか判断できなくなるだろう。

そんな認知症の高齢者をもてあましている家族にとっての「病院」と「施設」は、病院だと周囲に対して「入院している」(場合によって「医者に入院させられた」と表現する人もいる)と言える。これに対して、施設だと「預けている(入れている)」となり、これは家族が自ら高齢者を施設に連れて行ったような響きがあり(実際その通りのこともあるのだが)、外聞が悪いと思う人たちも多いように感じる。

老人ホームは、かつて「養老院」と呼ばれていた。それが昭和38年に老人福祉法が制定され「老人ホーム」と改称された。当時の「養老院」という言葉には「陰」「暗」のイメージがあったのかもしれない。「ホーム」という言葉に「陽」「明」を期待したのかもしれない。

しかし、それから50年以上経ったいま、「養老院」のほうが「入所」ではなく「入院」という言葉を使えるし、家族にとって心の負担がいくらかは軽いのではないだろうか。

2017年4月27日

プロ野球の名スカウト河西俊雄に学ぶ対人援助職のありかた 『ひとを見抜く 伝説のスカウト河西俊雄の生涯』


まったく知らない人の伝記である。プロ野球にかなり興味があるという人でも、スカウトの名前までは知らないのではなかろうか。

こういう縁もゆかりもない人の伝記を読むと、「読み手を惹きつけるような患者カルテの書きかた」を学ぶことができ、精神科医としてのトレーニングにもなる。というのは、だたの後付けの理由かな。すべての伝記が面白いとは言わないが、評判の高い伝記は読みごたえがあって良いものである。

さて、本書の主役である河西が大切にしていたのは、誠意と直感。これは対人援助職でも重要だ。誠意のほうは敢えて言うまでもない。直感はちょっと厄介だ。対人援助職では直感に頼りすぎて痛い目を見ることがあるし、それと同じくらい、直感を無視して残念な結果になることもある。直感・直観の扱いというのはなかなかに難しいものだ……。

野球選手の名前もたくさん出てきたが、知らない選手が多かった。それでも楽しめた本なので、伝記として上出来だと思う。

2017年4月26日

研修医時代に出会いたかった……、研修医の皆さん、読むなら今ですぞ!! 『救急外来 ただいま診断中!』


当院の当直は、医師一人ですべての科の患者をみる。そして、さらに緊急に専門的な診療が必要と判断したら、各科のオンコールを呼ぶというシステムである。これまで、長年にわたって精神科医は当直免除だった。これは、ずいぶん古い時代に派遣元の精神科医局と当院とで取り決められたものだが、当院と医局との縁は切れて久しい。取り決めは、すでにうやむやである。

昨年末、新医局長から精神科医にも当直をお願いできないかという打診があった。この依頼には、一部の若手医師による「精神科医は当直免除で優遇されている」という不満の他、いろいろな思惑が付随しているのだが、それはまぁここで書くことでもない。

さて、そういう事情があったので、一念発起して救急外来の本を一冊通読してみようと思い立った。ボチボチ進めたので読み終えるのに1ヶ月かかったが、ちゃんと読み通すことができた。研修医時代を思い出して復習しながら、と言いたいところだが、ポンコツ研修医だったので思い出す内容があまりない。いま持っている身体疾患の知識は、ほとんどが研修医を終えてから身につけたものばかりだ。

そういうわけで、現場の空気感だけを思い出しつつ、新たな知識を一生懸命に読んだ。読んだだけで身につくことはないが、そのつど本書を見直して、トリアージして、オンコール! という流れになりそうだ。研修医時代に、こういう本を読みながら仕事をしていれば、もう少しまともな医師になれたのかもしれない……、と一人静かに反省と後悔。

どういう本なのか参考になるよう、目次の見出しと副題だけでも記載しておく。

1.意識障害に出会ったら
  原因を見逃さないための10の鉄則
2.湿疹に出会ったら
  心血管性・出血性を否定せよ!
3.痙攣に出会ったら
  目撃者を探せ!
4.ショックに出会ったら
  早期発見・早期治療を心掛けよ!
5.アナフィラキシーショックかな?と思ったら
  アドレナリンを正しく使用せよ!
6.敗血症かな?と思ったら
  早期発見・早期治療を心掛けよ!
7.尿管結石かな?と思ったら
  正しく診断しよう!
8.疼痛患者に出会ったら
  痛みの問診を習得せよ!
9.頭痛患者に出会ったら
  くも膜下出血を見逃すな!
10.胸痛患者に出会ったら
    Pitfallsを知ろう!
11.腹痛患者に出会ったら
    恐い腹痛を除外せよ!
12.吐下血に出会ったら
    緊急内視鏡の適応を理解せよ!
13.高K血症かな?と思ったら
    診断と治療の正しい理解
14.肺炎かな?と思ったら
    重症度を正しく評価しよう!
15.尿路感染症かな?と思ったら
    除外診断と心得よ!
16.髄膜炎かな?と思ったら
    腰椎穿刺の閾値を下げよ!
17.めまいに出会ったら
    歩けなかったら要注意!
18.頭部外傷に出会ったら
    原因検索が最重要
19.低血糖かな?と思ったら
    ブドウ糖投与しておいしまいじゃ困っちゃう
20.脳卒中かな?と思ったら
    病歴聴取が最重要
21.アルコール患者に出会ったら
    お酒にまつわる落とし穴
22.心肺停止に出会ったら
    胸骨圧迫が超重要

それぞれ深すぎないところが良い。不熱心だった研修医時代を終え、精神科医として9年目になる俺でも読んで分かりやすい本だったので、現役研修医の皆さんには強く勧める一冊である。

2017年4月25日

良くも悪くも、現代風でライトな新選組小説 『夢の燈影』


新選組の中でもマイナーな人たちを題材にした短編集。Amazonの内容紹介では「無名の隊士たち」と記載されているが、新選組関係の本を何冊か読んだ後では、井上源三郎や観察方の「山崎丞」は充分に有名な気もする……。いや、それまでまったく知らなかったのだから、やはり「無名」か?

それはともかくとして、内容は非常に現代風である。文章、文体が軽いという意味ではなく、隊員たちの感覚、特に「友」「親友」という言葉が出たところに、現代風な印象を受けた。司馬遼太郎は新選組の小説で「この時代には友情という言葉や感覚はない。友情に近い感情はあったが、それは言うなれば義兄弟といった類いのものであった」というようなことを書いていた。これが頭にあったから、本文中の「友情」にいまいち馴染めなかった。もちろん、司馬遼太郎が絶対に正しいというわけではないのだが。

作者の小松エメルは、主にラノベ(?)を書いている人のようで、読みやすさという点ではさすがであった。その代償として、新選組小説を読む人が期待するような悲哀や悲壮、緊張感や重圧感といったものはいくぶん犠牲になっているように感じた。

2017年4月24日

平成29年の桜

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春を仰ぐ。

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また来年。