2018年6月22日

高田純次が、浅いことを、浅く語る、その浅さがテキトーで心地良い 『人生の言い訳』


テキトー男こと高田純次が、人生のあれこれについて、浅いことを、浅く、テキトーに語ってしまう本書。思わず吹き出すことも多々あったが、ただの時間つぶしにしかならない、と言いたいところだが、案外にそうでもなかった。

浅いことを浅く書くというのは、実はけっこう難しいのではなかろうか。人間、どうしても深みを持たせたくなるものである。かといって、あまりにテキトーすぎても誰も読まない。バランス感覚はかなり必要になってくる。

バランス感覚というのは、精神科診療をするうえで自分自身も気をつけているし、おりにふれて患者や家族に提案してみることでもある。彼らに、こういう本を薦めてみるのもアリなのかな……?

うん。

ナシだね。

2018年6月21日

スタンダードすぎる新選組 『土方歳三散華』


新選組小説で、隊士たちのキャラづけはかなりスタンダード。

小説ではあるのだが、作者がちょいちょい個人的な意見を出してくるので、ふっと現実に引き戻される。司馬遼太郎や池波正太郎などの歴史小説でよく見られる「神視点」は、本来あまり好きではない。司馬や池波が巧みなので引き込まれるが、本作はちょっと神視点が多すぎた感がある。よほどの新選組ファンでなければ、敢えて読むほどでもない。

2018年6月19日

もっともっと観たかった…… 『ゆめいらんかね やしきたかじん伝』


平成26年1月6日に亡くなった関西の視聴率男やしきたかじん。彼の生い立ちから亡くなった後までを丁寧に、そして柔らかく優しく描いたノンフィクションである。

たかじんのことは経済学部の学生時代に友人から、
「夜中にやっているたかじんのバーが面白いぞ」
と言われて知った。確かに話術が面白く、その勢いでたかじんの著書も読んだ。ただ、『たかじんnoば~』は毎回ゲストを呼んでのトーク番組で、あまり知らない人たちが入れ替わり立ち替わりするので、あまり入り込めなかった。

その後しばらく、彼をテレビで観ることはなかった(というか、テレビ自体をあまり観なかった)。『そこまで言って委員会』で久しぶりにたかじんを観て、面白かったので録画してでも観るようになった。ところが、病休したかと思ったら、あっさりと他界してしまった。

この本で初めて、実はたかじんが在日韓国人2世だったことを知った。あそこまで右寄りで嫌韓な番組の司会者をやっていたのに、まさか自らがいわゆる「在日」だったとは……。本書でも何回か触れてあるが、彼は自らの出自に非常に大きなコンプレックスがあったらしい。そうだったのか……。なんだか複雑な気持ちになってしまう。

テレビでのたかじんは、歯に衣着せぬ物言いをしながらも、対立する意見をうまくまとめ、揉めているのを丸くおさめるなど、素晴らしく人格者のように見えたのだが、実際には好き嫌いが激しく、我が強く、ワガママで、裏表があり、粗暴で、自分が王様で……、かと思えば寂しがり屋で、ナイーブで……、とても人間くさい人だったようだ。

読み終えて、あぁ、もっとたかじんの番組を観ておけば良かったなぁ、と思った。

2018年6月18日

サイコパスの不気味さをまざまざと見せつけられるノンフィクション「小説」 『復讐するは我にあり』


サイコパスの不気味さをまざまざと見せつけられるような本だった。

昭和38年、37歳だった西口彰という男が5人を殺害した。この西口彰事件を題材にしたものである。途中まで完全なノンフィクションだと思い込んでいたので、出てくる人たちの内面描写が多いのに驚きつつ首をひねった。

ノンフィクションなのに、人の気持ちをここまで書けるものかなぁ?

それでちょっと気になって調べたら「ノンフィクション小説」、つまりあくまでも小説ということで納得した。とはいえ、事件をかなり綿密に取材したうえでの内容なので、ほぼノンフィクションのようなものである。

本書での殺人犯は西口彰ではなく榎津巌(えのきづいわお)となっている。この榎津が逮捕後に笑いながら語る内容が怖い。
いちばん印象に残っているのは「あさの」のおかみで、ぜんぜん抵抗しようとせず、死ぬまで俺の顔を「先生、冗談でしょ」というように見つめていたなぁ。
詐欺というのは骨折り損のくたびれ儲けということ。殺しはたいした手間もかからず、確実に金になるからね。
こういうことは著者の佐木隆三が想像で書けるものではない。佐木隆三自身がサイコパスだったり、よほどサイコパスに精通していたりすれば、もしかしたらこんなことも書けるかもしれないが、おそらくそうではない。西口彰は、実際に笑いながらこう言ったのだろう。こういう人とは、絶対お近づきになってはいけないのだが、サイコパスは一見すると魅力的な人が多いらしいから恐ろしい。

彼が犯した殺人事件はともかくとして、詐欺事件だけに目を向ければ、その手口の鮮やかさ、堂々としたなりすましかたには、ある種のエンタテイメント性を感じてしまう。騙された被害者がいるので、決して「面白い」とは言えないが、映画『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』の日本版小説を読んでいるような気持ちにはなる。

直木賞受賞も頷ける一冊であった。

※本文中に「西口彰がサイコパスである」ということはまったく書かれておらず、俺の個人的見解である。

2018年6月15日

新選組小説が好きなら一読して損はなし 『新選組魔道剣』


新選組を題材にした短編集。

ややエロチックな場面が多いところは、これまで読んだ新選組関係の小説とやや趣が異なる。ただ人物像はわりと典型的で、入り込みやすくもある反面、新鮮さには欠けた。短編小説なので、奇をてらったキャラづけよりはストーリーで勝負というところか。さて、そのストーリーであるが、星4つはつけられるくらいの読み飽きしないもので、新選組ものが好きな人なら読んでおいて損はしないだろう。