2015年1月29日

ボーン・コレクター


映画の『ボーン・コレクター』がいまいち面白くなかった記憶があって、少々敬遠していたのだが、原作はけっこう面白かった。映画と違うのは、主人公が恐らく白人のハンサム男性だということ。ただ、読みながらキアヌ・リーブスがブラッド・ピットで脳内再生しようとしても、どうしてもデンゼル・ワシントンになってしまう……。

著者のジェフリー・ディーバーは元弁護士というだけあって犯罪や犯罪捜査に関してすごく詳しく描かれているが、それ以外にもかなり博識だということが感じられる。また人間の苦悩というものもうまく描かれているように感じた。ドンデン返しも良かったし、ラストも秀逸。

思わずブックオフで続編のうち高評価のものを数冊購入。

2015年1月27日

同級生の首を切り落とした高校一年生は、その後どうなったのか 『心にナイフをしのばせて』


1969年、高校一年生の男子が同級生に殺され、さらに首を切り落とされるという事件があった。その事件から28年たった1997年、いわゆる酒鬼薔薇事件が起きる。本書はその酒鬼薔薇事件をきっかけにして、28年前の事件の遺族、特に被害者の妹を中心に取材したものをまとめたものである。主に妹の一人称で描かれる事件後の生活は、生々しい苦悩に満ちたもので、読む者の胸が苦しくなるほどであった。

その一方、加害者Aはどうしていたのか。30年近く、謝罪の手紙も電話もよこさなかったAの経歴を筆者が追っていくと、少年院を出た後に有名私立大学を2つ卒業し、なんと弁護士になっていた。Aの現在を知らされた被害者の母とAとが、事件後初めて電話で会話する場面があるのだが、なんとも胸くその悪い展開で思わず手足が冷えてしまった。

読後感は決して良くない。しかし、一読の価値はある。

少年法に違和感をおぼえる人と、少年法を守るべきだと考える人、両方にお勧めできる。

2015年1月26日

眠れない一族 食人の痕跡と殺人タンパクの謎


致死性家族性不眠症の話題をスタート地点にして、クールー病(ニューギニアで死者の脳を食べることで感染)、クロイツフェルト・ヤコブ病、狂牛病といった病気、そしてそれらの原因であるプリオンの発見にまつわるエピソードなどを描いてある、医学系ノンフィクション。

致死性家族性不眠症は統合失調症やうつ病などと診断されていた時代もある。そんな病気の原因を追い求めていく科学者・化学者・獣医師・医師らが奮闘したり醜く争ったり、そういった人間くさいところも面白い。

面白いのだが、翻訳がいまいちこなれていないので、★4つ。それから、翻訳タイトルが良くない。原題は、
『The Family That Couldn't Sleep: A Medical Mystery』
「食人の痕跡」というのは本書の印象をミスリードしかねない。こういうのをまさに蛇足というのだろう。

2015年1月23日

仕事は楽しいかね? 《最終講義》


無知は、知識よりずっと人に自信を与えるものである。
これは本書の中の一節であり、非常に印象に残る名文であった。 前作の書評でも言ったことだが、自己啓発本はあくまでもヒント集であり、正解が書いてあると思ってはいけない。

2015年1月21日

買って良かった、ハンドブレンダ―

ブラウン ハンドブレンダー マルチクイック MQ500
妻が欲しいと言っていたので、去年の10月の誕生日にプレゼントした。次女ユウが少し前から離乳食を食べるようになったのだが、その離乳食作りに大活躍している。

「一回やってみてよ、なんか楽しいから」

炊き立てのご飯をいれた容器を妻から手渡されて、半信半疑でブレンダ―のスイッチオン!! 

あっ、アッーーーーーーーーーーーーーーーー!!

なにこれ、気持ち良い!!

ご飯がウニャーンって、グニョーンって、ブリョブリョってなって、あっ、あっ、あっという間に病院や施設のトロミ食みたいになったよ!!

これは使ったものにしか分からない快感かもしれない。ブレンダ―なんか使わずに離乳食は手ですり潰すのが正解と信じている人には勧めても仕方ないかもしれないが、忙しい現代のママにはかなりの強い味方になると思う。

インディゴの夜


舞台は少し変わったホストクラブ、主人公は30代の女性オーナー。さらっと読めるプチドタバタ劇で、ちょっぴりミステリ風味ありだが、ミステリ・ファンには物足りなさすぎるだろう。

内容は可もなく不可もなく、ただ続編を買おうとまでは思わなかった。

2015年1月20日

事故して入院中

といっても、入院しているのは愛車のミニ・クーパー。

日時と現場は平成27年1月18日の朝、病院の駐車場。
相手は78歳の男性が運転する軽トラ。

どちらが悪いとここで言っても仕方がないが、俺としては納得のいかない状況であったということ、駐車場整理をしている事務の人も、
「あれは向こうが悪いでしょ……」
と言っていたことは書いておこう。もちろん事務員は同じ病院で働く身内でもあるから、この言葉がすべて正しいわけではないと分かっていても、そう言ってもらえると少し癒される。

今回の事故で痛感したことや面白かったこと。

1.やはり田舎の高齢者が運転する軽トラは無保険なのか!?
どう考えても事故のハイリスク群であるはずなのに、保険に入っていないとはどういうこっちゃ。そのせいで状況が若干ややこしい。

2.事故の相手に連絡先や住所を教えるのは気持ちが悪い。
相手は俺が医師だと気づいたようで(後に、数年前に精神科の受診歴があり、俺も一度だけ処方していたことが分かった)、こちら側の保険の担当者には、
「先生に修理代を請求する」
と言っていたらしい。保険の担当者からは、もし相手から連絡があっても、とにかく保険会社に任せているの一点張りで通すようにとアドバイスされた。医師ということで吹っかけて来ないとも限らないし、相手の家族が厄介な人でないとも限らない。
そんな状況で、相手が俺の電話と住所を知っているのは気持ちが悪い。

3.我が家のビーグル犬の太郎、けっこう頭が良い!?
代車で帰宅すると、太郎が一向に小屋から出ようとしない。俺が玄関から入っても、その後に散歩のために出てきてものんびり構えている。クーパーの時にはワンワン吠えるのに。あぁちゃんと俺だと分かっているんだなぁ……、って、いやちょっとまて、お前もっと番犬しろ!!


以上、今年、前厄である俺の事故トーク。

ちなみに、事故した瞬間、ああ、また日記のネタが増えたなぁと思えるのは、精神衛生上、非常によろしいと感じた。

パライゾの寺


人の世の哀しさや卑俗さや切なさをブレンドして、エロスというスパイスを振りかけたといった感じの小説。

民俗学者の聞き歩いて書いていくという設定の短編集で、時代は明治、主な舞台は土佐である。ジワーッと心に残るような作品。

2015年1月19日

ふりかけの袋の裏面にビックリ!

サクラがふりかけごはん大好きで、それを見ていて、たまには俺もふりかけごはんを食べようかと思って買ったのがこの2つ。

美味い! ちょっとだけピリッとするが、子どもでも食べられると思う。俺と妻専用なのでサクラには食べさせないけれど。

ところで、ビックリしたのがふりかけの袋の裏面。

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「本商品で使用している海苔は、えび、かにの生息域で採取しています」

アレルギーに悩む人たちの苦労と、永谷園の企業努力をひしひしと感じた。

私のフォト・ジャーナリズム


19歳、大学1年生の時に出会った長倉洋海の『フォト・ジャーナリストの眼』に心を鷲掴みにされた。今ほどフォト・ジャーナリストがメジャーではなかったし、俺自身が世間知らずだったこともあって、写真と言葉の両方を駆使して何かを伝えるという方法が新鮮で憧れになった。

アルバイトをしてお金を貯めて、キヤノンの一眼レフを買った。あれが俺の写真ライフの始まりだった。あれから20年、今では家族の歴史を撮ることがメインである。

本書は長倉洋海の駆け出しから世に出るまで、どういう苦労や苦悩があり、どんな出会いがあったかをザザッと記された新書。分量は多くないのであっという間に読み終える。やっぱりフォト・ジャーナリストは凄い、なんてマヌケな書評。

2015年1月16日

錯覚の科学


・バイクや自転車の多い地域のほうが、それらが車にぶつけられる事故が多い。
・平凡な日の記憶より、衝撃的な出来事のあった時の記憶のほうが鮮明で正確である。
・経験を積んで優れた医師ほど、自らの診断に絶対の自信をもつ。
・あなたは、自転車や水洗トイレの仕組みを知っている。
・「サブリミナル効果」は悪用されると怖い。

一見すると当然のようであり、どこかで見聞きした話であるこれらのことは、実は錯覚である。バイクや自転車の多い地域のほうが、それらが巻きこまれる事故は少なく、衝撃的な出来事のあった日の記憶も平凡な日と同じくらい間違いが多いし、経験を積んだ医師ほど絶対の自信から距離を置くし、自転車や水洗トイレの仕組みを図解できる人は少ないし、サブリミナル効果は実は否定されている。

バスケットボールの実験(『となりの車線はなぜスイスイ進むのか』のレビューで紹介した)で有名な教授らが書いた人間の錯覚に関する本。

このての本で、最初は単行本で出版されて、後に文庫化されたものは概して質が高いように感じる。本書もお勧めの一冊である。

なお、文庫化されてからのレビューは少ないので、単行本のほうも参考に

2015年1月13日

子どものヒーロー・オリンピック ~アンパンマン~

「第1コース、アンパンマン!」
「こんにちは、ぼくアンパンマンです。今日は一生懸命がんばります」
拍手喝采。

「第2コース、アンパンマン!」
「こんにちは、ぼくアンパンマンです。今日は(以下略)」
拍手喝采。

「第3コース、アンパンマン!」
「こんにちは(以下略)」
拍手喝采。

「第4コース、アンパンマン!」
「こん(以下略)」
拍手喝采。

「第5コース、アンパンマン!」
以下略。

実況「さて、世紀の一戦となりました、なぜか5人のアンパンマンによります100メートル自由型。まもなくスタートの合図です」

ピッ、と笛が鳴り、飛び込み台に上がる5人のアンパンマン。
「テイク・ユア・マークス」
いっせいに前かがみになる5人のアンパンマン。
ピーッ!
一斉に飛びこむ5人のアンパンマン。

「「「「「 顔がぬれて、力が出ない…… 」」」」」

実況「出るなや!!」

見下ろす交差点

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2015年1月8日

観覧車

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大きいものを撮るのは楽しい。

2015年1月7日

小暮写眞館


何回か泣きました。

主人公は高校生の英一。写真屋の建物をほぼそのまま残したという変わった新居に戸惑う彼に、一枚の写真が持ち込まれる。それはあり得ない場所に女性の顔が浮かぶ心霊写真。不動産屋の無愛想な事務員・垣本順子に見せると、その顔は泣いていると言う。その写真の謎を追ううちに「心霊写真バスター」みたいな立場になってしまった英一と友人らの青春、それから彼をかこむ家族たちの物語。

宮部みゆきの長編。単行本で713ページあった。家族と離れて過ごす土日を狙って土曜日の昼から読み始め、目論見通りに日曜日の朝に読み終えた。分量は多いけれど、読みにくいものではないし、文字がぎっしり詰まっているわけでもないので、思いのほか早く読み進めることができる。

2015年1月6日

心と女

書道を習っている男性患者が、師範からこんなことを言われたらしい。

「心」と「女」という漢字は、バランスが難しい。

彼はその話を聞いて、自らの心の病気のこと、自分の娘との親子関係のこじれ、そういったことを思い出して、しみじみ納得したそうだ。

俺は漢字がけっこう好きで、「『幸せ』から一本引くと『辛い』になる」とか、「愛はまごころ、恋はしたごころ」とか、そういうこじつけめいた解釈のできるところが素敵だと思っている。



寒そうに震える捨てイスたちの写真

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捨てイヌではありません。

2015年1月5日

ずる 【TED】


行動経済学者ダン・アリエリーの本で、彼の本を読むのはこれで3冊目になる。どういう人かはTEDの動画を見るのが手っ取り早いかもしれない。



高校時代の恩師であるI先生から、以前、
「心理学に興味のある高校生に読ませるなら、どんな本が良い?」
と尋ねられたことがある。「心理学に興味がある」という場合、その意味するところはかなり幅がある。フロイトやユングといった硬派なものから、精神疾患を対象とする精神科関連のもの、それから「話しながら無意識に顎に手をやる人は~である」といった合コンで受けるようなネタが豊富なものまで。

そして、「心理学に興味がある」という人の多くが意図しているのは、たいていライトでネタ的なものである。そういう人にこそ、行動経済学関連の本は非常にお勧め。行動経済学は決してチープなものではないのだが、少なくとも本で紹介されているものに限って言えば、研究手法や結果が非常に分かりやすくて身近である。

もし周りに「心理学に興味がある」という人がいたら、ぜひとも行動経済学の本を勧めてみて欲しい。たとえその人の意図した心理学ではなかったとしても、読んでみれば行動経済学の面白さにきっと気づくことだろう。

2015年1月4日

正月休みの読書は不作だった

年末年始で6日間の休みをもらったのだが、その間の読書がどうにも不作続きで哀しかった。

面白くなくて途中で放りだした(損切り)本について書くことはしないようにしていたのだが、今回は4冊連続の損切りだったため書いておくことにする。

いずれもAmazonレビューの評価が高いので、ぜひそちらも確認して欲しい。

Amazonで★4.2
途中から流し読み。作者がユーゴスラヴィアに興味があるのはよく分かった。だが、小説としては非常に説明くさい。チンタラした進行、そう驚愕でもない結末と、その結末を知ってもさほど大したこともないと感じる伏線。こういう小説で★5つと4つが多いことに驚かされる。


Amazonで★4.2
難解な宗教SF。これを楽しむためには宗教や哲学に関して相当の造詣の深さが求められるだろう。★5が圧倒的に多いところに、レビュアーの誇り高さ、というか、鼻高々さを感じてしまう卑屈な俺。


Amazonで★3.9
『反・進化論講座』という難しそうな主題に惑わされてはいけない。むしろメインは副題の『空飛ぶスパゲティ・モンスターの福音書』のほうである。内容はバカバカしいものの、決してただのバカ話ではなく、進化論を否定したインテリジェント・デザインに対する痛烈な皮肉である。非常に優れた皮肉ではあるのだが、1冊丸ごとを時間をかけて読むほどの価値はないと判断した。


Amazonで★4.6、ただし母集団は平成26年1月4日時点で7人。
吉村昭の短編5つをおさめた本。表題作の『磔』と、実在したやや破天荒な医師の哀しい最期を描いた『コロリ』は面白かったが、その他のはちょっと楽しめなかった。最後の『洋船建造』は流し読みさえしなかった。


現在、積読の本が200冊くらいあるので、そのうち4冊が短期にはけたというところに、ささやかな慰めを感じる今日この頃であった。


【教訓】
Amazonのレビュー・トラップには気をつけなければいけない。