2011年12月20日

連合弛緩と観念奔逸、それから、妄想を語る人を現実に引き戻す大切さ

統合失調症で妄想が活発で、連合弛緩もあって、支離滅裂な会話を延々と続ける患者さんがいる。「連合弛緩」とは、会話内容にまとまりのないことだが、これは実際に見てみないと分かりにくい。具体的には、

「東京が北朝鮮から攻められていることは明らかに分かっているけれど、そもそも連続殺人犯が喫茶店のママをしていて、それが実の姉だと最近分かって、だから自分もどうにかしないといけないと思って戦っている。実際のところ、私はFBIだから、走り回って皆を守っているんだ」

といった感じで、ひたすら話しまくるけれど、聞いている方には何がなんだか分からない。ストーリーにまとまりがなさ過ぎて、こちらの頭にも残りづらく、したがってカルテにも記載しにくい。

躁病の人が多弁になる時の「観念奔逸」は、統合失調症と違って、連想ゲームのようなまとまりのなさになるが、一応ストーリーはしっかりしている。具体的には、

「北朝鮮がミサイルを発射したみたいだけど、ミサイルは何でできているのかしら? 鉄かしら? 鉄工所で作っているなら、うちの父が鉄工所で働いていたから少しは分かる。父はすごく厳格な人だったけれど、母は優しかった。母は地元が東北の人で、だから漬物が大好きで、そのせいで高血圧になって、私も高血圧で、この前病院で診てもらったら薬を飲みなさいって言われました。ミサイル? あぁ、そうそう、北朝鮮がね」

といった具合に、一応それぞれのストーリーは筋が通っている。話が逸れたことを、それとなく知らせると、気を悪くした様子もなく、パッと本筋に戻る。

両者とも思いつきで書いたので、例えが下手で伝わりにくいかもしれない。

さて、精神科医になりたてのころ、指導医K先生に教わったこと。

妄想活発な人に体調や食事や睡眠などの現実的な話をして、一回の面接で数秒でも現実に引き戻してあげることが大事。現実に引き戻す時間が数秒から数十秒、数分、さらに数時間と伸びていけば、それがその人の回復の証。

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