2017年12月14日

精神科医が「みている」もの

診察室では、患者の言葉以外も観察する。外見や仕草はもちろんのこと、ニオイも観察材料である。

ある女性を診察していて、どこかで嗅いだことのある臭い(正直、強い悪臭)だと思ったら、実は別の男性患者と姉弟で、一緒に住んでいるとのことだった。なるほど、同じ臭いになるはずだ。

別のある日、診察室でガムを噛んでいる人がいた。数回の離婚歴あり。仕事は長続きせず転々としており、いずれも「職場の人間関係」が理由で辞めている。この人のカルテには、
「診察中、ガムを噛んでいる」
と記載した。この一文と生活歴を合わせて、読む人ば読めば、多くのことが伝わるだろう。

また、当院の診察室のドアはスライド式になっており、そのドアを閉めないままに着席して喋り出す人がいる。これだと待合室から丸見え、丸聞こえなのだが、それを気にする素振りもない。こういう様子もまた大切な所見であり、
「ドアを閉めず、いきなり話し始める」
といったことをカルテに記載する。

精神科医は、耳だけでなく目も鼻も用いて「みている」。

0 件のコメント:

コメントを投稿

コメントへの返信を一時中止しています。
一部エントリでコメント欄に素晴らしいご意見をいただいており、閲覧者の参考にもなると思われるため、コメント欄そのものは残しております。
また、いただいたコメントはすべて読んでおります。