2018年1月5日

短歌の思い出 『淋しいのはお前だけじゃな』


ブックオフを辞めてからの数ヶ月、なんの目標もないまま過ごしていた。朝5時から8時までコンビニで働き、9時から17時までブックオフの二番煎じのような中古本屋でバイトをした。仕事が終わると、朝働いているコンビニに寄ってビールを2本買い、廃棄する弁当をもらって帰宅した。

そういう生活を送る自分への嫌悪感が芽生え始めたころ、俵万智の『サラダ記念日』に出会った。俳句よりは字数制限が緩やかで、季語にこだわる必要もない。そんな短歌に魅せられて、自己嫌悪を解消するため、そして自分を励ますため、思いつくままに短歌を作り始めた。パソコンがあったので、どうせならとホームページを作り、そこに短歌を手当たり次第にアップした。

ある日、ホームページに載せていたアドレス宛に一通のメールが来た。差出人は俺と同じ歳くらいの若い女性。慢性疾患があって入退院を繰り返しているとのこと。そんな療養生活の中、ネットでたまたま見つけた短歌を読み、元気が出たり慰められたりした、と書いてあった。そして、辛いときにはお気に入りの短歌を読み返したり、入院中の夜には同室の子に読んで聞かせたりしている、素敵な短歌に救われています、ありがとう、と記されていた。

その後の1年足らずで何回かやり取りしたが、転居に伴うプロバイダ解約で音信は途絶えてしまった。その1年後、医学部に合格したことをメールで報告したが、返事は来なかった。いまも元気にされているのなら、お礼を言いたい。

彼女からメールをもらったとき、実は俺のほうこそ大いに救われていたのだ。
「元気です」そう書いてみて無理してる自分がいやでつけくわえた「か?」
本書で一番好きな短歌。

短歌とごく短いエッセイで構成され、あっという間に読み終える。短歌アレルギーの人でも、面白く読めるのではなかろうか。

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