2018年3月8日

他人の悲鳴を音符に置き換えるようなことはすべきでない 『臨床の詩学』


他人の悲鳴を音符に置き換えるようなことはすべきでない。
本書の中のすごく胸を打たれた一文。

大まかに2部構成になっており、前半は看護師向け雑誌(現在休刊?)に連載したもの、後半は単発の論考を集めたもので、どちらかと言えば後半の方に読み応えがあった。

中でも同感なのは、境界性人格障害をはじめとするトラブルメーカー的な人たちやクレイマーと、どう接していくかについて書かれた部分。まず第一が「その場しのぎ」。
話の通じない相手には、淡々と必要最小限の援助を提供し、それをも拒んだり曲解しようとするなら、たんに損得感情のレベルで「こうしたほうがあなたにとってベターですよ」と告げて引き下がる。
入院患者の場合、「こういうことをしていると、あなたにとって損ですよ」ということだだけを告げておいて、あとは多くを語らない。それで行動が改まらない場合、淡々粛々と行動制限を開始する。このほうが患者の身にもしみるようだし、こちらの精神衛生にも良い。こうしたことについて、本書の著者はこう言いきる。
我々は「善人ごっこ」をしているわけではないのである。
日々の業務に疲れている対人援助者にとっては、一服の清涼剤になるような一言である。 

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