1972年の作品。
84歳で「恍惚の人」(認知症)となった茂造を介護する主人公・昭子や夫の信利は戦争経験者であり、信利は出征もしている。こういう設定なので、主人公らに感情移入しにくいかと思いきや、なんのその。人のこころとは、時代が変わっても、そう大きくは変化しないもののようだ。
45年近くも前の小説なのに、主人公らの苦しみ、社会制度への失望や嘆きは、いまとそう変わらない。さらに、会話の調子、文章のテンポ、心情描写のどれもが素晴らしく、脚本家がこのまま現代ドラマにしても通じるようなものだった。
普遍的なものをつかみとって小説として遺した有吉佐和子のセンス、力量にほとほと痺れてしまい、彼女の小説は他のものも読まずにはいられなくなってしまった。
0 件のコメント:
コメントを投稿
コメントへの返信を一時中止しています。
一部エントリでコメント欄に素晴らしいご意見をいただいており、閲覧者の参考にもなると思われるため、コメント欄そのものは残しております。
また、いただいたコメントはすべて読んでおります。