2019年4月23日

認知症と自動車免許についての雑感

池袋の事故で、高齢者の免許返納についての話が盛り上がっている。しかし、高齢者が免許返納したら安心、というわけではない。

認知症で、免許返納したことを忘れて、何度も運転してしまう人もいるからだ。
だから、認知症の場合は、返納だけでなく「運転できない環境」作りが大切である。

よくやるのは鍵隠しで、それなりに有効だが、なかには怒り出す人もいる。
「鍵はどこだ?」と聞かれて「乗せられない」「渡せ!」と押し問答するのではなく、「一緒に探そう」と言って、本人が「運転の必要な用事」を忘れるか諦めるまでの時間稼ぎをするほうが良い。

ある家族はガソリンを空にした「捨て車」を置いていた。認知症の人が何かの用事を思い立ち、「運転しよう」と車に乗っても、エンジンがかからず奮闘するうち「何かの用事」は忘れてしまい、本人のなかで「運転の必要がなくなる」というのが、この「捨て車」作戦だ。

一番厄介なのは、運転に必要な認知・判断・操作の能力は明らかに衰えているのに、鍵を隠して「一緒に探そう」や「捨て車」作戦が通じるほどには認知症が進んでいない場合である。こういう状況で困り果てている家族は非常に多いのではなかろうか。

「車を手放す」という方法は究極の手段という気もするが、同居世帯で車をゼロにできない場合には難しいだろう。そして、せっかく車を手放したのに、隣の家の鍵つけっぱなしの車に乗って行ってしまった、というケースも経験した(へき地病院時代)。このケースの場合、認知症は前頭側頭型であった。

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