2019年11月7日

田代まさしさん逮捕へのコメントを見て思うこと

田代まさしさん逮捕で、普段かなり見識ある発言をしている人でも「薬物こわい」にフォーカスを当てすぎていて残念である。というのも、「こわい」にとらわれすぎると、「手を出したら終わり」になるし、それは容易に「そんなものに手を出した奴が悪い」に変わってしまう。

実際には、ハマらない人も、回復する人もいる。
意外かもしれないが、
「覚せい剤はしばらくやったことあるが、合わなかった」
と自然にやめてしまい、依存症に至らずに済んだという人は少なくない。
決して「手を出したら終わり」ではないのだ。酒やタバコと同じで、悪い意味での相性がある。相性が合うと、すんなり入って、そこから抜け出せなくなる。

本当に「こわい」のは薬物ではなく、田代さんが再使用するに至った個人的な問題や環境、入手経路が身近にあるという社会的な背景などのほうだし、もちろん依存症そのものが「こわい病気」である。

たとえば、糖尿病はこわいが、糖はこわくない。高血圧や動脈硬化はこわいが、塩分や脂質はこわいものではない。
もちろん違法か違法でないかの違いはあるし、それは社会的には重要なところだが、医療において「病気」として考えた場合、こわいのは「依存症」であって「薬物」ではない。

それから、「反省して欲しい」というコメントも見られるが、田代さんに対して世間が反省を求める必要などない。当たり前だが、使用した本人が最も後悔しているし、そもそも依存症は「反省で治る病気」ではない。
いくら反省しても再発は起こりえるし、反省なんてしなくとも回復することだってある。

これは、医療者であれば、臨床現場でのヒヤリハットやアクシデントに置き換えてみると分かりやすい。

ミスは起こりうる。だから対策を練る。

反省していないから、反省が足りないから、ミスが起こるわけではない。もっと反省すればミスが減るというわけでもない。
依存症も、反省よりは対策が重要かつ有効なのだ。


余談ではあるが、田代まさしさんがいた「RATS & STAR」には「ドブネズミからスターになる」という想いがあったそうだ。

鈴木雅之率いる不良グループがドブネズミからスターを目指したのに対し、法政大学に進学した甲本ヒロトは「リンダリンダ」で「ドブネズミみたいに美しくなりたい」と歌い上げた。

ドブネズミにまつわる二つのグループの対比が、なんだか美しい。

ちなみに、「RATS & STAR」は、逆から読んでも「RATS & STAR」である。

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