2019年11月8日

誰からも記憶されない女性が、生活改善アプリに毒されていくディストピアでたくましく生き抜く物語 『ホープは突然現れる』


主人公ホープは、誰からも記憶されない特殊体質を16歳で発現してしまう。両親や友人から徐々に忘れられ、人と会っても数分で忘れ去られてしまう。

そんな彼女の生きる術は、泥棒。

舞台は「パーフェクション」というスマホアプリが広まりつつある世界。この生活改善アプリによって画一化されつつある人々の暮らしぶりは、どことなくオーウェルの『1984年』で描かれたディストピアを彷彿とさせる。オーウェルが描いた「ビッグ・ブラザー」の役割を、本作では「パーフェクション」というアプリが担っている。

作者クレア・ノースの第一作『ハリー・オーガスト、15回目の人生』は心に残る名作だったが、こちらも「世界幻想文学大賞」を受賞したのが頷ける素晴らしい作品だった。

余談だが、この小説の映画化は絶対不可能だろう。「誰からも記憶されない」ということを映像では表現できないから。小説でしか描けない物語という点でも価値ある作品。

0 件のコメント:

コメントを投稿

コメントへの返信を一時中止しています。
一部エントリでコメント欄に素晴らしいご意見をいただいており、閲覧者の参考にもなると思われるため、コメント欄そのものは残しております。
また、いただいたコメントはすべて読んでおります。