2011年12月10日

そこびえ

「この島は底冷えするからねぇ」
島の人たちは、みんなそう言う。底冷えとは、辞書によると、
「からだのしんまで冷えること。また、そのように寒いこと」
と説明してある。

しかし、「底冷え」という響きからは、ただ「非常に寒い」以上の何かを感じる。イメージとしては、例えば同じ寒さでも、無風の状態は「底冷え」ではないし、逆に身を切るような風が吹いている状態も「底冷え」とは言えない。

では、「底冷え」とはどんな状態なのか。
例えば外がどんなに強風でも、数人で狭い部屋にこもって風をよけて、じっとしていれば、そのうち各々の体温で自然と部屋が温まる。ところが、これが「底冷え」だと、なぜかちっとも温まらない。風が吹いているわけでもないのに、せっかく温まった空気が揺らいで逃げていくような、魔力を持ったかのような冷気が静かに忍び寄ってきて温かな空気を追い払ってしまうような、そんな不思議な、足先から寒くなるような状況こそ「底冷え」というのにふさわしい。

この島は、底冷えするのだ。

0 件のコメント:

コメントを投稿

コメントへの返信を一時中止しています。
一部エントリでコメント欄に素晴らしいご意見をいただいており、閲覧者の参考にもなると思われるため、コメント欄そのものは残しております。
また、いただいたコメントはすべて読んでおります。