2018年10月9日

アルコール問題と重なって見える…… 『新訳 ジキル博士とハイド氏』


タイトルは超有名だが、読んだことのある人は意外に少ないかもしれない。手にとってビックリ。こんなに薄い本だったとは……。しかも主人公はジキル博士ではない。ハイド氏でもない。ジキル博士の親友で、弁護士のアタスンなのだ。

大雑把なストーリーは知っている人も多いだろう。ジキル博士が、自ら開発した薬を飲むことで凶暴な人格ハイド氏になってしまう。このハイド氏のことを、ジキル博士は恐れてもいるが、同時に憧れてもいる。それも当然で、ハイド氏の人格はまったくの外部から来たものではなく、ジキル氏が日ごろ抑え込んでいるものなのだから。簡単に言うと、ハイド氏になればスカーッとするわけである。この感覚にジキル博士はハマりこんでいく。

人間の二面性を描いたとも言えるだろうが、俺には自らのアルコール問題と重なって感じられた。とうとうジキル博士は自殺を選ぶのだが、こういう結末も、まるでアルコール依存症の人である。

ところで、この小説は当時の外科医ジョン・ハンターから着想を得たという。そもそもの読むキッカケは、『解剖医ジョン・ハンターの数奇な生涯』を読んで興味を持ったからである。ジキル博士が住んでいるのは「昔の外科医の家」であり、その外科医こそジョン・ハンターなのだ。

どんでん返しがあるわけでもなく、知っているストーリーをなぞるだけの読書ではあったが、それでもさすが名作として残っている古典だけあって、充分に面白かった。

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