2018年12月10日

それでも戦地へ行く理由 『戦争を取材する 子どもたちは何を体験したのか』


4歳の息子を亡くした難民の男性が、著者の山本美香さんに言う。
「こんな遠くまで来てくれてありがとう。世界中のだれも私たちのことなど知らないと思っていた。忘れられていると思っていた」
ありがとう、ありがとうと涙を流す姿に大きな衝撃を受けました。
直前まで、山本さんは悩んでいた。若手ジャーナリストとして紛争地ではたらく医師や看護師たちを取材し、「なんてすばらしい仕事だろう」と感動し、そして自らの「ジャーナリスト」という職業をちっぽけな存在だと感じるようになったのだ。そんなときに出会った男性の言葉が、彼女の気持ちを変える。
私がこの場所に来たことにも意味はある。いいえ、意味あるものにしなければならない。たったいま目撃した出来事を世界中の人たちに知らせなければならない。
彼女のこの決意が、それから20年ほどして、彼女自身の命を奪うことになってしまう。2012年8月20日、山本さんはシリア内戦の取材中に銃撃を受け、搬送先の病院で死亡した。

本書の発行は2011年7月12日。亡くなる1年前である。中学生くらいを読者対象としているようで、文章はですます調、多くの漢字にルビがふられ、内容はシビアであるが、大人向けほど難解な話は出てこない。だからこそ胸を打つ部分もあるが、やはり物足りなさも感じる。ただ、我が子たちがいつの日か自然に手に取ってくれるよう、家の本棚には置いておきたい。

0 件のコメント:

コメントを投稿

コメントへの返信を一時中止しています。
一部エントリでコメント欄に素晴らしいご意見をいただいており、閲覧者の参考にもなると思われるため、コメント欄そのものは残しております。
また、いただいたコメントはすべて読んでおります。