統合失調症の当事者であるロリ、父母、弟たち、友人、主治医らによる手記。
ロリの知的能力が高いからだろうか、彼女による発症前後の内面描写は生々しく、興味深く、そして恐ろしい。薬を飲んで寛解するとき、薬を飲まないで再燃するとき、その二つを繰り返すとき。それぞれの気持ちも、非常に巧みに記述してあり、精神科医としてとてもためになった。
父母や弟らによる手記は、辛く、切ない。また弟の一人はロリへの尊敬と愛情を強く抱きつつ、「自分も発症するのかもしれない」という発症恐怖を感じており、そういう気持ちが痛々しく綴られている。
主治医である女性医師の手記では、臨床姿勢や考えかたから、統合失調症の人と接するうえで大切なことを学ぶことができる。
そして、クロザピン。
日本でも限られた施設でしか処方できないこの薬が、ロリを崖っぷちから、いや崖の底から救い出した。劇的に回復するとき(精神科では数ヶ月単位の回復も「劇的」である)、幻聴や妄想、こころの動きはどうなるのか。ロリの手記から、その一端を垣間見ることができる。
こんな素晴らしい名著が、なぜか絶版である!!
クロザピンを日本で販売しているノバルティスは、本書の復刊を支援して、多くの精神科医に推薦してまわるべきではなかろうか。
クロザピンを日本で販売しているノバルティスは、本書の復刊を支援して、多くの精神科医に推薦してまわるべきではなかろうか。
Amazonではあまりに高値になっている。近所の古本で安くで見かけたら、即買いするべき一冊だ。
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