医療関係の本は、大きく二つに分けられる。一つは、エビデンスやガイドラインなどを淡々と記載するもので、共著者が多数いる本ではそういうタイプが多い。もう一つは、エビデンスやガイドラインに関して一部割愛したり大胆に省略したりして、そのぶん著者の臨床哲学を盛り込んだタイプの本である。
どちらにも一長一短あるのだが、俺が読んで面白いと感じるのは哲学タイプの本である。これまでにも、そういう本と数多く出会ってきたが、今回また素晴らしい本に巡り会ってしまった。
著者の河合先生はまえがきで、全人的医療についてこう語る。
…おい、大切な何かを忘れてないか? そう、人生の3分の1を過ごしている時間を忘れていないかって聞いているんだ! それ、全人的医療と違う! 3分の2人的医療や!冒頭からこの熱さとテンポであるからして、その後の内容も推して知るべし。たとえば成人の閉塞性睡眠時無呼吸症候群。患者の中には機械を用いるCPAPという治療に消極的な人もいるが、河合先生は「医者の正義を押しつけない。疫学を脅しの道具に使わない」と釘をさす。
こういう真摯かつ熱い調子で、総論を除けば、
- 成人の閉塞性睡眠時無呼吸症候群
- パラソムニア 睡眠中の異常行動
- ナルコレプシー
- レストレスレッグズ症候群
- 救急外来における睡眠医学
- 不眠
- 入院病棟における睡眠医学
- 集中治療室における睡眠医学
- 医師の睡眠不足
- (小児科医以外のための)小児の睡眠医学
- 概日リズムと睡眠覚醒リズム障害
が語られる(きっと河合先生は語り足りていないはず)。
患者の睡眠について、知識も興味も使命感もない人には読み進めるのが辛いと思う。逆に、それらが少しでもある人にとっては絶対に楽しめる本であり、睡眠をより深く考えるキッカケにもなる良書である。
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