2019年7月2日

誰もが知っている一般的な症状だからこそ、一応の診療知識は持っておきたい! 『外来で目をまわさない めまい診療シンプルアプローチ』


「めまい」という言葉は、医療者でなくても知っている一般的な言葉だ。しかし、めまいを医師として「みる」となると、これがそう簡単なものではない。つい「まずは耳鼻科に行ってください」と言いたくなるのだが、精神科に通う人の中には、他科を受診する気力がないという人もいる。そして、毎回のようにめまいを訴えられ、耳鼻科受診を勧めては断られ、ということを繰り返すうち、「めまい」も初期診療くらいはできるほうが良いという考えに至った。「めまいはきつい、でも耳鼻科には行きたくない」という人に、主治医として何かしてあげられないだろうかというのは、多くの医師が共通して持っている感覚だろう。

本書の要旨は非常にシンプルである。めまい診療のために著者が提案するのは、こんな方法だ。
とりあえずどんなめまい患者にでも適応できる、科学的で、しかも簡単な(患者負担の少ない効率的な)鑑別の手順を、あらかじめ決めておくという作戦です。
全部で140ページ弱あるうちの前半37ページまでで、この作戦に関する考え方や手順について語り尽くされている。あとのページは実際の診療と治療、それから疾患各論である。

また本書前半には、めまいの統計的なことが書いてある。大学病院と市中病院とでは、受診する患者の重症度が異なるという前提にたって、著者の勤める病院(市中病院)で調査すると、2年間で「めまいのみ」を訴えて来院した患者1332人中、良性発作性頭位めまい症が716人、実に半数以上であった。また中枢性めまいは2%にも満たなかった。

全体的には、精神科医でもそれなりに読み進められる内容だったが、疾患各論に入ってからは少々難易度が上がった。

良性発作性頭位めまい症の治療法は勉強になったが、急性発症のめまいを訴える患者が最初に精神科外来に来ることはまずないので、あまり使う場面はなさそうである。病棟でめまいを発症したという場合に、駆けつけて初期診療するための基礎知識にはなったかな(この本持参で駆けつけるかもしれないが)。


難点はこの表紙。ちょっといただけないなぁ……。

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