2011年12月2日

千年樹


千年樹

この本をどう表現すれば良いのか。
樹齢千年のくすの木で交錯する男と女、敵と味方、喜びと悲しみ、現在と過去。100%の悪人も、100%の善人もいない。それなのに、人は傷つけあったり助け合ったりしながら生きていく。そういう人間たちを、大きなくすの木は、ただ黙って見つめている。

構成としては短編集。各話それぞれで、過去と現在の話が同時進行的に並べられ、さらに、各話での登場人物たちは、それぞれ少しずつ交錯していく。

物言わぬ仏像の顔が、見る者の心によってほほ笑んでいるように見えたり、怒っているように感じられたり、嘆いているような気がしたりするのと同じように、ただ立っているだけの木が、仏像のようにほほ笑んだり怒ったり嘆いたりしている。そういう風に感じるのは、読んでいるこちらの心の在り方のせいであろう。

そんなことを考えさせる本。

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