おそらく彼は幻想世界、パラレルワールドに憧れている。それと同時に、そんな異世界に足を踏み入れてしまい、そこから抜け出せなくなるということを恐れてもいる。だから彼の描く異世界は、とても魅力的で、そして怖い。醜い者たちがうごめくこともある世界なのに、どこか儚くて美しくも見える。
一部で恒川ワールドと称されるこの世界観にハマる人は、恒川氏と同じく、どこか遠くの幻想的な世界に憧れつつ、そんな世界に対する畏怖も持っている人だと思う。まさに、俺がそうだ。
竜が最後に帰る場所
短編集である本作は、他の恒川作品と比べたら異世界色があまり感じられなかったので、ちょっと肩すかしを喰らった感がある。とはいえどれも面白かった。中でも『夜行(やぎょう)の冬』は、他の短編と違って恒川ワールドの真骨頂が発揮された物語だった。
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