2012年5月21日

影踏み

「まさか彼が警察官になるとは……」
という友人がいる。高校時代から、柔道などの男くさいのが嫌いで、暴力も嫌い。どちらかというと君子危うきに近寄らずをしっかり守っているタイプだったのに、なぜか大学を卒業して公務員予備校から警察官になってしまった。運動があまり好きじゃない彼だったから、警察学校で苦労するんじゃないかと思っていたが、予想に反してしっかり卒業、警察官としてすでに10年近くのキャリアを積んでいる。

「酔っ払いとか暴れる人なんてどうするの?」
と聞いたところ、
「まぁまぁ、署で話きくから、とにかくおいで」
という具合に連れて行くのだとか。とてもそういう肝っ玉のすわった感じじゃなかっただけに、非常に感心した。やはり、朱にまじわれば赤くなるということか。

振り返ってみて自分はどうか。俺もバイオレンスな場面は好きじゃない。どちらかというと、いわゆる屁っぴり腰だ。でも、診察室や病棟では肝がすわる。診察室の自分の席に座ると、特に強い。患者や家族に対して強気になる、というわけではない。心の中に余裕が生まれるのだ。この人や家族をなんとかしてあげたい、と思ってさえいれば、診察室や病棟で起こるたいていのことはどうにでもなる。

きっと警察官になった彼も、相手や地域の安全を思って気持ちを切り替えるのだろう。

影踏み (祥伝社文庫)

横山秀夫の連作小説。主人公は警察とは真逆の泥棒。人のものを盗んで生きる主人公を決して好きにはなれないが、なぜだろう、いつの間にかハラハラしながら応援している。なんというか、カッコいいのだ。度胸とか、腕っ節とか、泥棒技術とか、セリフまわしとか、そういうのがカッコいい。ハードボイルド小説というのは読んだことがなかったが、こういう感じを言うのだろうか。これを読んで泥棒に憧れる人がいないことだけを祈る。

面白かった。

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返事が遅くてすいません。