デング熱を媒介するネッタイシマカへの対策として、遺伝子組み替えを受けたオスの蚊(GM蚊)の話がラジオで取り上げられた。これはイギリスのバイオ関連企業オキシテックが開発したもので、この遺伝子組み替え後のオスと普通のメスとが交尾すると、孵ったボウフラは成長できずに死滅するのだ。これを紹介していた人は、海外では次々と導入されているもので、日本でも早急に取り入れるべきだと言っていた。
これは怖い。いや、怖いというより、少なくともデング熱を意識した対策としては、リスクとベネフィットが釣り合っていない。遺伝子組み替えをした蚊を解き放った後、蚊の激減が生態系にどのような影響を与えるかも未知数であるし、その他どういうことが起こるのか分からない部分が多すぎる。
蚊が媒介する病気には死亡率の高い日本脳炎をはじめ、セントルイス脳炎ウイルス、マラリア、その他あれこれたくさんある。それぞれで年間の発生数、不顕性感染(感染しても症状が出ない)の割合、死亡率などが異なる。こういう要素を考慮に入れて、GM蚊を野に放つリスクより、蚊を大幅に減らすことのベネフィットが勝ると判断できれば、この方法は推奨できる。ただし、徹底的に吟味したうえでの判断でも、50年後、100年後に「あれで正しかった」と評価されるかは分からない。
少なくとも日本におけるデング熱対策としては、このGM蚊の導入はやりすぎであり、危険だ。仮に重篤といわれるデング出血熱でも、死亡率は1%。それも、あるタイプのデング熱に感染し、回復した後さらに別のタイプのデング熱に感染することで発症するのだから、日本でデング出血熱を発症するのは稀中の稀である(頻度としてはデング熱患者10万人のうち出血熱になるのが250人。そしてそのうち、死亡するのが2-3人)。これがたとえ死亡率の高い日本脳炎(媒介はコガタアカイエカ)の対策だとしても、やはりリスクとの釣り合いが取れていない。国内での日本脳炎の発症者は2013年に9人で、ワクチンもあるのだから。
東南アジアなど、蚊による感染症が猛威を振るっている地域で導入するならまだ理解できるが、それでも、もしかすると蚊が生態系でキーストーン的な位置を占めている可能性だってある。蚊が激減した変わりに、もっと有害な生物が大繁殖しないとは誰も言い切れないのだ。
<参考>
Wikipedia 不妊虫放飼 ネッタイシマカ対策
東南アジアなどだけで導入しても、航空貨物や客室を通して、いずれ日本に入ってくるでしょうしね。
返信削除ブラックバス等、外来種の繁殖ぶりを見ると、そうそう簡単にやっていいことだとは思いません。
>ししとう43さん
削除そうですね。たしかにいずれ日本に来るでしょうね……。
東南アジアで導入することもやはり環境のことを考えるとリスキーだし、なんで遺伝子組み換えの蚊なんて発想になったのか……。