なんとも魅力的なタイトルである。
「専門外の医師のための」と銘打ってあるだけに、内容は最低限に絞られている。
第1章 「てんかん」との出会いに応じた初診時の対応
第2章 治療を始める前に
第3章 大人のてんかんを診察するためのミニマム脳波
第4章 代表的な大人のてんかんの診断と治療
第5章 フォローアップはどうするか
第6章 主要抗てんかん薬の薬剤プロファイル
これらがB5サイズの本で、わずか120ページ強に網羅されているのだから、その絞りっぷりが分かるというものだ。子どものてんかんはばっさりカット、小児科から引き継ぐ大人のてんかんに関してもカットという大胆さである。
ちょっと長くなるが序文を抜粋引用する。
諸外国と比べると本邦においては、多くの非専門医がてんかんをもつ成人の人達を診療していることがわかっている。わが国のてんかん診療の裾野が広いともそれは表現できるが、膨大な手間ヒマのかかるてんかん専門医に求められる知識ではなく、8割の人達を診療できる必要最小限の知識を提示することがこうした状況においては重要であろうと思われる。圧倒的多数の成人のてんかんの患者は、手術の対象にはならないし、多くの成人には発作回数やコストパフォーマンスから、発作時脳波を記録することは現実的ではない。(中略)「脳波の読み過ぎは、患者に無用の負担や苦痛を強いることにつながる」というのは、東北大てんかん科教授の中里先生も再三指摘されていることである。また、この言葉によって「問診は得意だが脳波が苦手」という医師は気持ちが楽になる。それから、「てんかん除外目的」で脳波をオーダーする医師への歯止めにもなる。
可能な限り成人てんかんの一般的な治療に不要な項目は省き、現実に診察室に成人の抗てんかん薬ユーザーおよびその家族が現れる場面を想像しながら組み立てた。またてんかん診療を行う上で、1つの関門となると思われる脳波については、脳波の予備知識がなくても必要最小限のアプローチができるよう1つの章にまとめて提示した。脳波はてんかん診断において必須の道具であるが、脳波の読み落としよりも、脳波の読み過ぎが成人の診療においてはしばしば誤診の原因となること、成人の診療においては多くの場合、問診力がまず第1にあってそれから脳波の判読がくることを付け加えておきたい。
他の病院を簡単には紹介できないような田舎に赴任した新人勤務医は、得手不得手に関係なく「てんかん診療」に携わらなければいけない。そういう医師が最初に目を通しておくべきは『ねころんで読めるてんかん診療』で、てんかん診療への興味と少しの自信が持てたら、次のステップとして本書が良いのではなかろうか。
<関連>
「てんかん診療には自信がありません!」と、自信を持って言えるようになる不思議な本 『ねころんで読めるてんかん診療::発作ゼロ・副作用ゼロ・不安ゼロ!』
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