2018年2月5日

1番の問題を取り除くと、2番目が昇進する 『コンサルタントの秘密』

「1番の問題を取り除くと、2番目が昇進する」

これは、精神科の診察室で何度となく経験する法則である。こうして次々と昇進してくる問題を、精神科医がモグラ叩きのように解決していくと、いずれ患者は精神科医を「モグラを叩いてくれる人」と思うようになるだろう。それは、患者にとって良いことなのだろうか?

個々人の問題はそれぞれ自分で解決しなければならない。そう考えて診療している。だから、精神科医としては、モグラを「叩く人」ではなく「叩き方を教えてくれる人」でありたい。もっと進んで、「何かしてくれるわけではないが、叩くときに側にいて、叩き損ねたら照れ笑いにつき合ってくれて、手首を痛めたときには労わってくれる人」あたりが理想像だ。

カウンセリングや精神療法といったものは、いわば患者の人生に関するコンサルタントみたいなものだ。企業のコンサルタントは、自ら解決法を提案することはしない。その企業で働く人以上にその企業のことを分かっている、そんなコンサルタントはほとんどいない。そして、これはもの凄く重要なことだが、コンサルタントが経営者以上に損失を受けることは絶対にない。精神科も同じだ。患者以上に患者に詳しい精神科医はいないし、患者以上に医師が損害をこうむることはない。


そういうわけで、日常診療の役に立つかもしれないと思ってコンサルタントの本を読んでみた。予想通り、非常に示唆に富む本で、若干の読みにくさはあるものの、それを補うに充分な内容だった。その中で印象的だった話を一つだけ。

盲人たちが集まって象を触り、それぞれが、
「木のようだ」
「蛇のようだ」
「縄のようだ」
「家のようだ」
「鎗のようだ」
「毛布のようだ」
「家のようだ」
と感想を述べた。

この逸話を会社に置き換えると、盲人とは各部署で働く人ということになる。彼らは会社全体のことを自分の部署だけで判断してしまう。彼らに象(会社)をより詳しく把握させるためにはどうしたら良いだろう。

盲人(従業員)になるべくたくさんの場所(部署)を触らせるのも一つの方法だし、象(会社)のミニチュア(概要など)を用意するのも良い。これらはいずれも優れたやりかたであるが、最良の方法には遠く及ばない。

では、最良の方法とは何か。

それは、実際に盲目を癒すこと。


まぁ、そうは言っても、そんな簡単な話ではないけれど、一つの考えかたとしてとても面白い。

さて、これを読んでどう活かすか。

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