ある洗車場がスタンプカードを導入した。そして、客を2つのグループに分け、片方は「8個のスタンプがたまると洗車1回無料」にした。もう片方のグループでは、「10個のスタンプがたまると洗車1回無料。ただし、そのカードには最初からサービスとして2回分のスタンプが押されている」というものにした。
どちらのグループも実質的には「8回洗車で1回無料」ということに変わりはないが、後者のほうには「最初から2個のスタンプが押されている」という「スタートダッシュ」がある。
さて、実験の結果はどうだったか。
数ヶ月後、無料洗車までこぎつけたのは、前者が19%であったのに対し、後者のスタートダッシュ組では34%がスタンプをためきった。しかも、ためきるまでの時間も短かった。
自分で何かを始めようとするとき、あるいは誰かに何かを始めさせようと思うとき、この「スタートダッシュ」の考えかたは非常に有効だ。
「自分(あるいはあなた)は、現時点でゼロではなく、小さな一歩を踏み出している」
と感じさせるのが、その先の行動に結びつくということだ。
これは、本書で紹介してあった実験である。
病院の診察室での応用を考えてみよう。
肥満、高血圧、高血糖、高脂血症といったものを改善するために生活習慣を変えさせたい場合、
「あなたには食事制限の必要がある」
と指導するより、食生活や運動習慣をもう少し細かく聞きだして、小さな行動を大きく取りあげ評価する。
「1日5分でも散歩し始めているんですね。それはもう、ダイエットが始まっているのと同じですよ」
「ジュースをカロリーオフにしているんですね。それはもう以下略」
「塩分控えるための調理本を買ってみたんですか? なるほど、それは以下略」
といった具合に、診察室で「あなたはすでに、改善のための一歩を踏み出しています」という「スタートダッシュ」のついた生活指導をプレゼントするのだ。
とても面白い本なので、ぜひご一読を。
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