2011年12月20日

ギリシア神話を知っていますか?


二十歳の頃に一度読んだ。今回、改めて読み直したのには訳がある。それは、精神科の先輩医師が、
「現代の精神疾患や精神分析のエッセンスはギリシア神話に全部ある」
と言っていたからだ。さすがに、その先輩の言葉は大げさだとは思うが、教養としてのギリシア神話に改めて触れておくのも悪くない。そういう思いで読み始めることとなった。

ギリシア神話といって思いつくのは、「ナルシスト」の語源にもなったナルキッソスに関するものだが、今回この本を読んで『アリアドネの糸』も印象に残った。

アリアドネと聞いてもピンとこない人は多いと思う。この人に関連するミノタウロスというと「あぁ」と思う人は多いかもしれない。ミノタウロスとは頭が牛、体が人という怪物で、クレタ島のはずれにある迷宮に棲み、毎年、生け贄として捧げられる少年少女7人ずつを食べていた。

このミノタウロス退治にやってきたのがテセウスである。テセウスはアテネの王子であり、アテネとクレタは政治的に争っていた国であった。では、どうしてアテネの王子がクレタ島の怪物退治に乗り出したかというと、過去にアテネとクレタが戦い、アテネが負けてしまったせいで、毎年、アテネからクレタ島に少年少女の生け贄が捧げられることになったからだ。アテネの王子としては、立ち上がらないわけにはいかなかった。一方、アリアドネはクレタの王女であった。生け贄の中に混じってクレタへやってきたテセウスに、アリアドネは恋をした。敵国の王子に恋をするなどもってのほかであるが、そんな障害があればあるほど恋心は燃えるものかもしれない。

いよいよテセウスたち生け贄が迷宮へ送られる前日。いてもたってもいられなくなったアリアドネは、迷宮の設計者ダイダロスのもとへ行った。しかし、ダイダロスも年老いていて迷宮の構造は憶えていないし、設計図は王の命令で処分されていた。そこで、ダイダロスはアリアドネにこうアドバイスをした。
「迷宮へ入るテセウスに糸玉を持たせなさい」
なんてことのない助言だが、この糸玉のおかげで、ミノタウロスを退治したテセウスは迷うことなく迷宮から脱出できた。クレタの王としては、ミノタウロスを倒したことは良いとしても、アテネの王子に娘が恋をして手助けをしたことは不愉快である。気持ちの問題だけでなく、娘を見逃すことは王としての威厳にも関わる。アリアドネは国にとどまればどうなるか分かっていたので、テセウスとともにクレタから逃げ出した。

これで一件落着すれば良いのだが、クレタの王としては何らかのケジメをつけなければいけない。そこで、アリアドネに糸玉のアドバイスをしたダイダロスが標的となってしまった。ダイダロスはミノタウロスのいた迷宮に閉じ込められることになったのだが、その時にとばっちりを喰らったのがダイダロスの息子で、あの有名なイカロスである。ダイダロスは翼を作り、イカロスとともに飛んで迷宮を脱出するのだが、父親の制止も聞かずに上へ上へと飛びすぎたイカロスの翼は、太陽の熱で接続部の蝋が溶けてしまい、まっさかさま地面に落ちることになった。

逃げ出したアリアドネがどういう人生を歩んだかは、この本を読んでもらうとして、こういう話が好きな人にはお勧めの、読みやすいギリシア神話入門書(?)である。

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