2012年4月5日

『ブタがいた教室』 エゴイストな教師の児童虐待



映画の原作である本、


これのAmazonレビューを見ると、評価は賛否両論。

一時期、4本足のニワトリの絵を描いた子どもや、魚の切り身が海を泳いでいると思っている子どもが話題になった。「今の子どもたちは」というお定まりの結論になるのだが、テレビがこれだけ普及した現代社会で、4本足のニワトリを描く小学生はごく稀、そもそも本気ではなく、面白半分で描いたのかもしれない。そうでなければ、あとはその子の知的レベルの問題だ。今の世の中で、いわゆる「普通」の小学生が、4本足のニワトリを描くことはありえない。魚の切り身が泳ぐと思っていた子どもも同じだ。悪ふざけで言ったことが騒動になった程度のことだろう。もし本気で切り身が泳いでいると思っている子どもなら、やはり知的な問題だ。ちなみに、4本足のニワトリに関しては、旭川医科大学の入試から社会問題になったようだ。

この教師が実際に児童にブタを飼わせたのは1990年から1992年。彼が上記のような「現代っ子の自然離れ」を意識していたことは確かだろうが、それ以上に強く意識していたこと、それは自らの野心達成ではないか。この飼いブタを殺して食べる授業(?)には、途中からテレビカメラが入った。そして、ドキュメンタリー番組が制作された。その流れを彼がどこまで予見していたかは分からないが、飼いブタを殺して食べることにテレビの密着取材が入ったことで、自分のやっていることが物議を醸す、もっと言えば、賛否両論あれども「お茶の間ウケする」ということを彼は確信しただろう。彼はその時25歳。現在、佛教大学教育学部の教授となっており、当時から野心家だっただろうことは想像に難くない。その野心達成のために児童らを利用した、というのは決して言い過ぎではなかろう。

そもそも、情がうつった動物を食べる、ということが、はたして「いのちの教育」と言えるだろうか。なにか大きな勘違いをしているのではないか。子どものころから一緒に育てられたライオンとブタが、成長しても仲良くしている映像を観たことがある。同種か異種かに関係なく、ライオンでさえもブタを仲間と認識したら食べないのだ。まして人間が、名前をつけて仲よくなったブタを殺して食べるなんて、それはもう野蛮行為だ。スーパーや食卓の肉が、もともとはどういう動物だったかを知ることは大切だが、それを実際に飼わせてみて、さらに食べさせてみる、という計画は、子どもたちに野蛮行為を強要する、ある種の児童虐待とさえ言える。だいたい、そんなことをしないと、命の大切さは教えられないものなのだろうか。そうだとしたら、この教師は、教師としての指導能力どころか、普通の大人として子どもになにかを教える能力さえ欠如している。実際には、この教師はこんなことしなくても命の大切さは教えられると分かっていて、ただ実験的にやってみたかったというところが本音ではないだろうか。どちらにしても、そういう人が教育学部の教授だなんて怖い。

最後に、超食糧危機になったら、俺は飼い犬の太郎を殺して食べるだろうか。あなたはペットを殺して食べるだろうか。逆に、ペットがあなたを殺して食べることはないとしても、力尽きて倒れたあなたの死体を、ペットが食べるだろうか。そういうことを考えてみるのは良いと思う。俺の意見としては、いざとなったら太郎を殺して食べるかもしれないし、逆に俺が先に死んだら、死体は食べても良いよ、太郎。

9 件のコメント:

  1. 映画の方を見ましたけど何を伝えたいのか意味不明でした!!
    ブタを飼うだけじゃダメなのかと疑問に思いましたもん。まさか教授になってるとは・・・。


    自分も魚の絵を書いたら切り身みたいになります。
    画力の問題で(T_T)

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    1. >あー太
      「伝えたいこと」がなくて、その授業を通じて教師が「知りたいこと」があった、という印象なんだよね。子どもを実験台にしているよ。だって、これこそが良いと思っていたら、毎年続けるはずだもん。だけど、あの一回で終わっている。

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  2. いのちの大切さを教えるなら、育てた豚を食べるより短命な動物を最後まで育てたほうが良いような気がしますよね
    四本足のニワトリは芸術性の表れなのではっ笑

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    1. >匿名さん
      芸術!!w アートな4本足w

      真面目な話、仰るとおりで、小動物を一年間飼うだけでも全然違うと思うんですよね。命の教育と食の教育を同時進行でまとめてやろうとしたから歪が生じたと思います。

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  3. よくぞ言って下さった!この教授がやった事にずっと違和感を感じていましたが、私の能力では、このようにうまく表現できませんでした。感謝です。

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    1. >匿名2012年6月6日 17:24さん
      医師や教師という対人援助職では、「取り返しのつくことからやる」「害になることはしない」という二つを基本的姿勢として大切にしないといけないのに、こんな実験まがいのことをいきなりやるなんて……、しかも子どもに。どう考えても間違っているんですよね。

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  4. あの実験教師がその後どうなったかに興味がありました。まさか教授に上り詰めていたとは。
    殺生教育→佛教教授に唖然。

    ブログ主さんのご指摘通り、子供たちは野心家の餌食にされたと言えましょう。

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    1. >匿名2012年12月3日 1:15さん
      ありがとうございます。
      この先生がまさか教授になっていたとは……、俺もこれを書くときに調べて驚きました。

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