2011年12月12日

輝いていた菅、昔も今も変わらない官僚‏ 『お役所の精神分析』


お役所の精神分析

出版されたのが1997年3月だから、もう14年前。筆者は厚生省の医系技官だったが、暴露本を書いたことで懲戒免職された。

本書では、薬害エイズ問題を軸として、日本の官僚たちのダメさ加減が浮き彫りにされる。ダメダメぶりが目立っただけの菅元総理だが、当時はしっかりリーダーシップを発揮していたようだ。「郡司ファイル」と呼ばれる厚生省の怠慢ぶりの明確な証拠であるファイルは、菅が厚生大臣になるまで、どんなに探しても「見つからない」と報告されていた。そのことについてのインタビュー。
菅大臣がこれまでの大臣たちと根本的に違っていたことは、彼は事実の追求を、官僚ムラの調和より優先させたことです。でも彼は大きなリスクを背負ったのです。
彼はよほどのことがない限り、もう大臣を拝命することはないでしょう。(中略)
聞こえてくる噂によれば、全省庁が「もう菅のような大臣が来ることはお断りだ」と言っているそうです。ただ彼が総理大臣となる可能性はありますがね。
おい、これは予言書か!?w

現在、福島原発の問題がクローズアップされているが、高速増殖炉もんじゅの事故の時から一ミリも成長していないのが分かる記述。
ニューヨークタイムズ記者:少なくとも、あの事故はわれわれアメリカ人の目から見ると、原子力発電の根元を問うような問題を抱えたものです。本来なら納税者である国民に、事実を包み隠さず告げるべきです。
ところが科学技術庁は、できるだけ事故の内容は軽いものであるかのように見せようとしました。これも組織体の調和のほうが事実を国民に知らせることより優先された、もうひとつの事例ですね。
筆者:行政の判断について外部から疑いの視線は入れさせない。これが官僚の論理です。また判断に間違いがあったとしても、その処理方法は「外部に情報を絶対にもらさず、内部だけで問題を解決する」なのです。
十年以上たって、まったく進歩していないのね。

筆者が厚生省に入省したとき、上司から言われた官僚としての帝王学。
君、日本の官僚がどうしてこれだけ権限を握っているのか知っているか。我々が情報をすべて管理しているからだ。相手を見て、どれだけの情報を手渡すか。これが役人としての技量を問われる部分なのだ
この帝王学は、現在もしっかりと受け継がれているようだ。

当時の菅厚生大臣が天下りを禁止しようとしたときの逸話では、官僚たちの腐りきりっぷりがよく分かる。
記者発表のために菅大臣の手元にあった資料と、記者たちに配られた資料の中身が、一ヶ所、決定的に違っていた。記者たちに配られた資料には自粛の期間は「当面」と書かれていた。ところが菅大臣の手元の資料にはその文言が入っていなかった。
大臣が記者に発表する内容は、前日に原稿を見てもらい、内容の了承を得て記者会見の運びとなる。
当然、今回の処分に関する資料でも、前日に菅大臣はその内容を見ているはずである。そしてその文書には「当面」という文言は入っていなかった。
ところが、次の日の記者会見に至る間にだれかが「当面」という文字を書き加えたのである。そしてその文字が書き加えられたものが記者たちに配られた。菅大臣には前日のオリジナル原稿が渡された。
記者たちはこの当面という文言に興味を抱き、
「当面とは、どのくらいの期間を想定しているのですか」
との質問が発せられた。菅厚生大臣は、手元の資料に目を落とし、
「どこにそんな言葉があるのか。私の文書には、そんな言葉は入っていない」
(中略)
厚生官僚からすれば今回の処分は、官僚制度の死活問題がかかっていたのです。これをきっかけに天下りが廃止の方向に向かってしまったら、日本の官僚制度の根幹が変わってしまいます。そんなことはさせてなるものか、そう思って「当面」が書き込まれたのです。
こりゃ、今の原発問題が人災と言われても仕方がないな。読んでいて胸くそ悪くなるが、これが官僚たちの現実なのだろう。

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