2011年12月11日

クワイエットルームにようこそ


文章は面白かった。

しかし、舞台が精神科病棟なので、細部の評価は厳しくなってしまう。著者は精神科病院に関してはけっこう勉強していると思われるが、それでもまったく違う。

以下、ちょっとネタバレと医学的な話。

過量服薬した「わたし」が精神科病院の隔離室で目覚めると、ストレッチャーで腕と体と足を拘束されていた。

まず、これがありえない。過量服薬の患者を意識がないまま隔離することはない。まして「ストレッチャーで仰向けで拘束」など絶対にありえない。意識朦朧で仰向けで、手足縛られたまま嘔吐したら、死んでしまうからだ。そにれストレッチャーは不安定なので、拘束された患者が本気で暴れたら転倒する危険性が高い。

「わたし」は医療保護入院という強制入院なのだが、これに同意した保護者が内縁の夫。これもありえない。内縁関係の者が保護者となるというのは法的に想定されていない。精神保健福祉法は、ローカルルールで運用されている部分もわりと大きいので、もしかしたら、内縁関係でも保護者として認めている地域があるのかもしれないが……。

また「わたし」はパキシルなどを大量に飲んで「致死量」にまで達したのだが、現実的にパキシルはLD50(半数致死量。その量を飲んだら半分が死ぬ)が、マウスやラットでだいたい350mg/kgである。少なく見積もって300mg/kgと考えると、50kgの人間で15000mg。パキシルの一番大きな剤形規格が20mg錠なので、750錠飲まないといけない。それでようやく半分が死ぬ程度だ。1日2錠飲む計算で処方されたとして、1錠も飲まずに集めるだけでも1年かかる。向精神薬の過量服薬で死んだか死にかけた人を何人も見たが、大抵は薬の直接の影響ではなく、昏睡状態で嘔吐しての窒息死か、発見されるまで同じ姿勢で何十時間も昏睡状態になったせいで、筋が壊れて代謝物が腎臓に詰まって腎不全になってしまうというのが多い。

まぁ、細かいところは抜きにすれば、話しとしては面白かった。

2 件のコメント:

  1. 初めましてで失礼します<(_ _)>。いつも(嘘つきました、ごめんなさい。ホントはたまに!笑)楽しく拝見させていただいています♪

    で、せんせー、「私」、効不安薬を4種類大過量服薬したとき(おぃ!!)、救急病院で2日後に目覚めると仰向けで両手首と胴体拘束でしたよー。ストレッチャーじゃないから大丈夫なのかな?

    最初はICUだったそうですが、意識戻ったときは4人部屋?で2人だった。1人は寝たきりっぽいお年寄り。もう1人は私。2人だけの静かなお部屋…。もう嘔吐の心配なかったのかも?

    覚えているのは、めっちゃ腰が痛かったことwww。それから拘束帯の下に締め付けられた点滴の管が痛かった(今もアザになってるぅ~w)。おしめと尿のカテーテル?がしてあるな…って思った。それ以上に、お医者様や看護師さんの方にご迷惑をお掛けしたと思いますが・・・・このときにそんな余裕は…ない!!爆

    でもブログのお陰で、この本読んでみたくなりました☆
    ありがとう~♪

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  2. >ひかるさん
    いつも、ではなかった、時どきご愛読ありがとうございます(笑)

    二日後に目覚めたのなら、胃の中が空っぽって判断されたんでしょうかね?
    まる二日昏睡なら、相当量を飲んだんでしょう。
    発見されてなかったら死んでたかもしれませんね。
    まぁそれも人生、と割り切るのも良かったり悪かったり。

    俺としては、命あってこそ、と思っているし、そう思って欲しい立場です。

    今後もどうぞよろしくお願いします。

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