2011年12月3日

窓越しに見おろす景色がにじむ夜

私ね、時々こうやって窓から道を見下ろすの。
ほら、車が見えるでしょ?
信号待ちしてる。

私ね、ヘッドライトよりテールライトの方が好き。
ヘッドライトは明るすぎるから。
ヘッドライトは前ばかり照らして、
後ろの人のことなんかちっとも気遣わない。
でも、テールライトは違う。
テールライトは、優しいよね。

あ、青になった。
ほら、信号が。

私ね、止まってる車のテールライトが好き。
走ってる車のテールライトはすぐに通り過ぎちゃうでしょ。
ロウソクの炎みたいに、小さくて、ちょっとだけ暖かくて、
そんな優しいテールライトが、ずっとずっと止まっていてくれたら、
そしたら私、ずっと優しい気持ちでいられる。
うん、きっと。
そんな、気がするの。

アイツはヘッドライトだった。
それも、走ってる車のね。
自己主張が強くてさ、いつも前ばかり見て、
後からついていく私のことなんか、きっとあまり気にしてなかった。
でも、あんなやつでもね。
ううん、違う、そうじゃないね。
こんな私でもね、こんな私でも、
ほんの一瞬だけだったけど、
アイツのヘッドライトに照らされてたんだ。
強くて、明るくて、まっすぐで。
まぶしくて、まぶしくて、まぶし過ぎて、
目をつぶってる間にヘッドライトは通り過ぎちゃったけどね。

泣いてない。
泣いてないよ。
泣いてないってば。
あんな奴のことなんか、もう気にしてないから。

どこかに、どこかにきっとね、私だけのテールライトがいるの。
ヘッドライトじゃなくて、テールライト。
永遠に青にならない信号。
そこで、ずっとずっと、私を、私だけを照らしてくれるテールライト。
優しく優しく暖めてくれる。

そんな、テールライト。

テールライト。

テールライト。


でも。



やっぱり。




もう一度だけ。





ヘッドライトに照らされたい。

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