2012年1月1日

平均年齢80歳、50人の老婆たちが熊と戦う! 『デンデラ』

登場人物は老婆50人、最高齢100歳、最年少が62歳。そんな彼女らが、野生の熊と対決する、そんな凄まじい物語。文庫では巻頭に全員の名前と年齢が書いてある。平均年齢、なんと80歳。


デンデラ

主人公は斎藤カユ、70歳。舞台は、姥捨て山の向こう側にある隠れ集落デンデラ。とある貧しい村で、70歳になると男女ともに姥捨て山に行くことが決まっていた。これを「お山参り」という。お山参りをすれば極楽浄土へ行ける、というのが村の言い伝えであった。

物語りは、雪降りしきる中、カユのお山参りのシーンから始まる。意識朦朧、これで安らかに極楽浄土へ行けると考えるカユ。いざ命のともし火消えようとしたところで、カユはデンデラの老婆たちに救われる。デンデラで目が覚めたカユは、助けられたことを喜ばない。むしろ憤慨する。デンデラの老婆たちを「生き恥」だと考え、そして口に出して罵る。それでもデンデラ軍団はカユを包み込むように受け入れる。

老婆たちは、ほとんど皆が生まれた村のことを恨んでいた。そして、いつか村を復讐のために襲撃しようという「襲撃派」と、デンデラを静かに発展させていくべきだという「穏健派」の派閥に分かれていた。決して一枚岩ではないのである。そんな平均年齢80歳の老婆集落に、熊が襲ってくるのだからたまらない。

あれ?
男がいないぞ。
集落の長である三ツ屋メイ(100歳)は言う。
「男なんざ絶対に入れんよ! この『デンデラ』は女だけのものだ! ざまあみろ」
ひゃぁっ、手厳しい!!
デンデラで生活したいとは思わないけれど、こうまで憎まれると男としては肩身が狭い。

そういえば、お山参りは70歳になったものがすることになっているのに、どうしてデンデラに60代の人たちがいるんだ? それは、10年前の大飢饉のとき、70歳に満たないものでもお山参りをしても「良い」ことになったから。最年少62歳の人なんて、当時52歳だよ。ひぇぇぇぇ。

全体を通してみると、無人島に漂着したロビンソンみたいなサバイバルものであり、女学園で派閥に分かれて火花を散らす乙女たちの青春ストーリーのようでもあり、熊に喰われるシーンがやけに生々しいパニック・ホラーという感じもあって、さらには生きるとは何か、死ぬとは何か、そんなことを考えさせる純文学風でもある。そんないろいろな要素を詰め込むだけ詰め込んで、うまくまとめ上げた感じ。

それにしても、この老婆たち、とにかく元気だ。木槍をもって熊に突っ込んだり、山を駆けたり、互いに取っ組み合いのケンカをしたり、とてもじゃないが、診察室で見る70歳、80歳の人にはムリだろうと思う。設定を、
「ある村では豊作祈願のため、毎冬になると裏山の社に15歳の少女を生け贄として捧げていた。彼女らはただ死を待つのではなく、山の向こうに小さな集落を創っていた」
という風にすれば、アクションシーンは違和感がなくなるが、村に対する凄まじい恨みや、熊や飢えや病気といった「死」と対峙する姿などは、やはり若造ではなく老婆たちでないと醸し出せない味わいだ。

映画化もされているこの小説。グロテスク描写もふんだんに盛り込まれているので、苦手な人は避けるべし。

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