2012年1月9日

ハラスのいた日々


ハラスのいた日々
人と犬との縁というのも、考えてみると実にふしぎなもので、ある意味では人間どうしの出会い以上にふしぎかもしれない。犬なんてみな同じようなものだと、前は思っていたが、あとになってみればその犬以外の犬ではだめだという、かけ替えのない犬になっているのだから。
これは冒頭の最初の一文である。のっけから、一気に引きこまれる本であった。

我が家の太郎との最初の出会いはペットショップで、そこには同じ母親から生まれたメスも一緒にいて、どちらかと言うまでもなく、明らかにメスのほうが美形であった。欲しかったのは男同士(?)で分かり合えそうなオスであったし、ビーグル犬を扱っている店は県内にそこしかなかったこともあって、なんだかブサイクだなぁと思いつつ、その“ブ”ーグル犬を相棒とすることに決めた。それが去年の三月のことである。

自分が先に島に引っ越して、太郎が届くのを待ちに待った。飛行機でやって来た太郎は、その後、ご飯を食べない、熱は出す、極度の貧血になりバベシア疑いとなるなど、とにかく肝を冷やすことが多かった。それも乗り越えると、めきめきと元気になり、走り回り、飛び跳ね、食べ、吠え、笑い、まさに、「あとになってみればその犬以外の犬ではだめだという、かけ替えのない犬」になったのである。

美談や感動話ではなく、本当に犬とのささいな日常生活が綴ってある。犬が好きな人なら、読んでぜったいに損はなし。

2 件のコメント:

  1. ずいぶん前にラジオで朗読してました。
    (入院していたわけでもないのになぜ聞いたのだろう)
    「ハラス」、鮭の腹身が好物なので覚えています。
    清貧の思想も書いた作家ですね、読んでみようかな。

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  2. >佐平次さん
    犬好きな方には、これはお勧めですよ。
    朗読を聴かれたのなら、二度目になってしまうかもしれませんが、
    それでも胸打たれたり、分かる分かると思ったりすること請け合いです。

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