2012年1月14日

患者から夢について相談されることが多いが……

精神科医の中には、夢を熱心に分析する人もいるようだが、自分はまったく興味がないし、あまり信憑性もないと思っている。ところが、精神科の診察室では、よく患者さんから夢の相談をされる。

たいていの場合、
「毎晩、同じ夢を見るんですが、これはなんですかね?」
「一晩中、夢を見るんですが、どうしてでしょうか?」
という質問が多い。

時には、
「人が死ぬ夢を毎日見るんですが」
「家の鍵を締めてまわるのに、どれも壊れているという夢を毎日見るんですけど」
といった具体的な夢の内容を相談されることもある。

まず「毎晩同じ夢を見る」ことについてだが、理由はよく分からない。実際に毎回同じ夢を見ているのだとしたら、それはそのことが気がかりだからだろう。しかし、本当のところは、『自分にとってインパクトのある夢を覚えている』ということだと思う。だから、毎日ではなくで数日おきくらいに似たような夢を見ていたとしても、インパクトのない夢は忘れてしまうから、結果として毎回同じ夢を見ているという記憶になる。

「一晩中夢を見る」というのはどうか。夢は、周期的にくる浅い眠りのときに見るもので、しかも基本的には目覚める直前に見たものだけを覚えているそうだ。しかも、本人は長い夢を見たような気がしていても、実際のところはほんの数秒からせいぜい数分程度の夢しか覚えていないものだという。だから「一晩中夢を見る」ということはありえなくて、「一晩中夢を見たような気がする」というのが正確なところなのだろう。一晩中夢を見るという人は、同時に「眠りが浅い」と訴えることが多い。そして、こういう人たちの多くが長時間の昼寝をしている。だから、夢のことはともかくとして、まずは生活改善を、とアドバイスをすることが多い。

具体的な夢について解釈を求められても、「さぁ」としか答えようがない。それだとあんまりなので、せめて「そのことが気になっているんでしょうねぇ」と言うくらいはする。でも、これだけで患者さんは結構満足してくれるようで、
「あぁ、身近で不幸が続いたので」
とか、
「そうなんですよ、うちは家が広いのに一人暮らしだから、戸締りが気になって」
とかいう具合に納得している。

夢なんかにあまりこだわらないほうが良いと思うが、「自殺する夢」を見たという人に関しては、ちょっと気をつけるほうが良いのかもしれない。精神科医・中井久夫先生は著書の中で、
「現実での問題を夢の中で処理・解決しようとし、解決できなかったものを起床時に覚えている」
といったことを書かれていた。これが正しいとすれば、自殺する夢は、現実での問題解決策として、一瞬とはいえ自殺の選択肢を考慮したということかもしれない。これはあくまでも中井先生の本を読んだうえでの私見であって、自殺する夢を見たら精神科を受診しろということではない。家族や友人が「自殺する夢を見た」と言っていたら、いつもより少し気をかけてあげるくらいで良いのかもしれない。

4 件のコメント:

  1. 人間関係の、それも昔の、こじれたとか変形の夢が多いです。
    いまだに囚われているのですね。
    ところでこのブログ、過去のコメントを見るのにはどうしたらいいのですか?
    自分でコメントしておいて忘れてしまうことがあるのです。

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  2. あっこはお菓子の家に住む♡っていうファンシーな夢を見ました。最後はあっこごと食べられるというシュールな夢でした。
    原因は一日掛かりで作った例のお菓子の家と、たまたま見たアリエッティでアッコッティになったのだと思われます。今年はPC使って設計するので大作になりそうです。

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  3. >佐平次さん
    それは大いにありうる夢ですよね。
    精神科の中では、例えば親しい人が亡くなった時より、
    こじれた関係の人が亡くなった時にうつになるという話を聞きます。
    後悔がたくさん残るんでしょうね。

    コメントに関しては、佐平次さんのブログに回答しておきました!

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  4. >アッコッティ
    お菓子の家に住んだまま食べられるとか、グロ夢やんw

    俺たちのお菓子の家は、いかに市販のもので完成度を上げていけるかに挑戦することにしたよ!

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