精神科病棟が舞台の中編小説が3編おさめられている。自分が精神科医なだけに、設定の中には、うーん、と思う部分もあった。とはいえ、さすがプロは違うぜ、と思った描写を抜粋する。
第一話で、主人公の青年が雨を嫌いだというシーン。
それでも雨は嫌だ。じとじとと小雨が降りつづくような天気が、中でもいちばん嫌だ。白いシーツを汚した小さな黒い染みが少しずつ滲み広がっていく、そんな映像が頭に浮かんで、どうにもやりきれなくなる。じっとしていると、身体のあちこちに黴(かび)が生えて腐りはじめそうだ。どうってことのない普通の描写なのだが、この5ページ先に、今度は以下の描写がある。
心配そうに僕の顔を覗き込む彼女の姿に、いきなり異様な変化が起こった。白衣のそこかしこに点々と滲みはじめた染み。なにがさすがかって、まず上段引用の下線部で、白いシーツに黒いシミが広がっていくシーンを読者にイメージさせておくから、その後の、白衣に赤いシミが広がっていく光景がすんなりと思い浮かぶのだ。
毒々しいほどに真っ赤な色の。まるで彼女の肉体に幾本もの見えない針が突き立てられ、そこから血が噴き出してきたかのように見えた。染みは物凄い勢いで広がっていき、あっと云う間に服の色を染めかえてしまう。
ストーリーは推理小説のような感じだが、まぁどれもなんとなく、オチは想像ついたなぁ。
最近売れてますよね。綾辻小説。アニメ化の影響は強いですね。
返信削除>あっこ
削除俺は『殺人鬼』『殺人鬼2』とこの本しか読んでないんだけど、殺人鬼のインパクトが強すぎて他のを読む気になれないw