2017年8月23日

子どもたちを殴らないで! 蹴らないで! 殺さないで!! 『殺さないで 児童虐待という犯罪』


紹介されている虐待事例の一つ一つが胸を締めつけてくる。思わず我が子の笑顔や寝顔が頭に浮かぶ。目頭が熱くなる。こんな死に方をしてしまう子どもを、そして子どもを虐待してしまう大人を、少しでも減らしたいと思う。まずは現状を広く知ってもらうべきだ。そういう草の根的な運動が、今の俺にできる精一杯。 

紹介されていた最初の事例は6歳の男の子ター君。真冬に、風呂上がりのター君は裸のまま駐車場で雪の上に寝かされ、足から胸まで雪をかけられた。実母と内縁の夫はカメラを手に、雪の下で震えるター君の後ろでVサインをつくった。二日後、ター君は死んだ。父母の裁判での様子も描かれているが、彼らのあまりの感受性の低さに愕然とする。

この他、たくさんの事例が紹介されている。
腹立ちの収まらない哲也は、簀巻き状態の大ちゃん(5歳)の腹の上に立ち、そのまま2回飛び跳ねた。「ギャーッ」大ちゃんは大きな叫び声を出した。死因は急性硬膜下血腫だった。
直樹が右手で腹や顔を何度も殴った。楓ちゃん(生後4ヶ月)は殴られた勢いで絨毯を横滑りした。香織はミルクを飲まない楓ちゃんの顔や頭を6回殴った。腹も3回殴った。
これは、それぞれの事例を、かなり省略して引用している。実際の中身は、ここに書かれたものの数倍の激しさである。虐待が表に出にくいことの一因として、本書ではこう述べてある。
虐待事件では死んだ子の怒りや恨みを代弁して損害賠償請求訴訟などを起こす人がいない。なぜなら、代弁すべき立場の親が加害者であるからだ。
大阪の家庭センターの企画情報室長・清水氏の体験談も切ない。
二十数年前、母親が病気のため施設で暮らしていた男の子を清水さんは忘れられないという。小学校へ入る時、母親から「引き取りたい」と言われた。乳児期にいったん親と離れた子どもは虐待されるリスクが高いという調査結果がいくつかある。清水さんは心配したが、母親の勢いに押し切られた。
児童相談所が行なった夏のハイキングに男児は元気な姿で参加した。食堂ではオムライスを嬉しそうに食べた。それを見て、清水さんは少しホッとした。だが、その数日後、男児は救急車で病院に担ぎ込まれ、そのまま息を引き取った。
後になって、男児が虐待された理由を知り、清水さんは衝撃を受けたという。
ハイキングでの出来事を母親に尋ねられた男児がオムライスを食べたことを話すと、母親は怒りだした。
「ハイキングでオムライスなんか食べるわけがない。この嘘つき!」
母親から殴られ、男児はタンスに叩きつけられたというのだ。(中略)
「こんなに予算をつけてきたのに、なぜ虐待は減らないんだとよく言われる。だが、やればやるほど埋もれている被害が浮かび上がるんです」
最後に、ぜひともみんなに知っておいて欲しいことを書く。精神的に大変な時期に、親が子どもを乳児院などに預けるのは、決しておかしいことでも悪いことでも恥ずべきことでもない。虐待しそうな自分が怖くなって、乳児院に子どもを預ける人がいる。彼らは凄く勇気があると思う。ある乳児院の院長の言葉を引用する。
少しでも親に可愛がられた経験があれば、一時別れて休息することで親子関係を作りなおすことが必ずできる。
イギリスでは「親権」という言葉を廃止し、「親責任」という言葉に変更したそうだ。確かに「親責任」というほうが、親という存在の意義をしっかり表しているように思える。

4 件のコメント:

  1. Ciao willwayさん
    この類の犯罪が一番許せない
    子供って本能的に親には守ってもらえると思っている
    その親に虐待され、殺された子供たちは、ダブルに裏切られたことになります
    その思いを考えると、怒りがね、わき上がるんですよ
    ちゃんと愛してあげられないのなら、産まなければいいのに...

    子供を預けるとか預けない以前の問題だとそう思います

    カバのお父さんは、自分の子供を殺す時があるらしいです
    お母さんカバが、お父さんの領域への子カバの参入の仕方を間違った場合
    そうでなければ、動物でさえ、自分の子供は虐待しないし殺さない
    最近の人間てさ、生物界で一番最低の物になりつつありますね

    なんでなんだろう??

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    1. >junkoさん
      結婚する予定はなかったけれど、赤ちゃんができたから結婚、というパターンが多いのかもしれませんね。赤ちゃんが欲しかったわけではなくて、赤ちゃんが結婚の理由になっちゃってたり……。

      ライオンのオスは、自分一匹の周りにメスをたくさん従えてハーレムを作ります。そこへ若いオスがやってくると群れを賭けて戦うんですよね。で、若いオスが勝って群れを奪い取った場合、そこにいる仔ライオンを全部殺すそうです……。そして、メスはその光景を見て発情するのだとか。継父の虐待に限って言えば、これに近いことが起こっているような気もします。

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  2. アノニマスこばね2012年6月14日 13:31

    私は子供の頃から、結婚して子供を生むのは
    当然なのだと思っていました。
    恐らく周囲もそういう価値観だったのだと思います。
    聞くところによると、本人の意思とは別の所で
    そんな価値観を強要する人達がいるようです。

    子供を育てる上では 親が非難される事が多いので
    一筋縄ではいかない子供の場合は特に
    親は苦しむようです。
    表に出ない、世間の日常的で自然な虐げが
    虐待する側を追い詰めていることもまた否めません。

    それでも、犯罪は、犯罪です。
    世間の認識を変えてもらうとか、(子を持つ≠当然 に)
    気軽に相談できる窓口を広げるとか、
    極端かもしれませんが
    まだ学生の間に 自分が親としての資質を持つかどうか
    見極めの目安になる事柄を学習するのも
    或いは有効なのかもしれません。
    むやみに抵抗感を植え付けてはいけませんが、
    少なくとも自分が“向かない”と判れば
    相談機関と連携して子供を育てることを
    選択する事もできると思います。
    「知らない」 ことが、一番怖いのです。

    行政の方に考えて頂きたいけれど、
    問題は、きっと、予算と時間でしょうね。
    とにかく、今の相談窓口はどこも忙し過ぎるようですので。

    偉そうに長々と、すみません…
    清らかなセクシーショットに癒されました♪♪

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  3. >アノニマスこばねさん
    こばねさん、アントニオいのきみたいですねw

    無知、これほど怖いものはありませんね。子どもを持つ前の年代から助ける機関の存在を教え、そこへ相談することが決して恥ずかしいことじゃないことをもっともっと周知すれば、救われる子どもたちというのは今よりたくさんいるのかもしれません。

    サクラ、セクスィでしょ!?w

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