2012年10月10日

恋のファインプレー

大学に入って半年ちょっと。 
俺は男女混合の仲良しグループで集まり、安い居酒屋で飲んでいた。メンバーは七人。男四人、女三人。そんなグループが仲良しなだけで終わるわけがなく、誰それと誰それは付き合いそうだとか、どうやらキスをしたようだとか、そういった話題は、当人たち以外で集まる時の話題になっていた。

さてそのグループの中に、アヤという女の子がいた。アヤは、中学時代にソフトボール部でキャチャーをしていたらしく、そのためか骨太で肉付きも良くて、おまけに性格もサバサバしていて、女の子らしい女性が好きな俺からしたら、ストライクゾーンからは大きく外れたヤツだった。

飲み会の話に戻る。まだビールが好きじゃなかった俺は、モスコミュールを頼んだ。安い居酒屋のモスコミュールは、たいてい美味しくない。ところが、その居酒屋のモスコは意外に良い味をしていた。俺は思わず、
「あ、うめっ」
と言った。誰も興味を示さない中で、アヤだけが食いついてきて、 
「マジで? 飲みたい飲みたい」
と言い出した。俺は、基本的に間接キスが苦手だ。男同士では、絶対にまわし飲みをしないし、女の子相手でも物凄く抵抗がある。しかし、まわし飲みがキライだとも言えず、アヤにモスコを差し出した。アヤは、普段と変わらない雰囲気のまま、
「どこ飲んだ?」
と聞いてきた。俺は、一瞬意味が分からなかったが、要するに、俺と間接キスをしないために聞いたのだと気付き、
「あ、そこ。ほら、ちょっとくもってるとこ」
と答えると、アヤは俺が何か言う間もなく、そのくもった部分を自分の口にあてて、グビグビと、モスコを飲んだ。

飲み会の帰り道。なぜか、アヤと二人きりになってしまった。
「わたしのサイン、分かった~?」
アヤが、舌のまわらない酒臭い息でからんできた。
「いや……、分かるもなにも」
そう答えると、アヤは正気にかえったのか、
「あ、そっか」
そう答えて、なんとなく寂しそうに離れていった。その姿が、なぜだろう、なんとなく、可愛かった。あれ……、ストライクゾーンから外れているのに……、俺ってもしかして悪球打ち? 
「お前さ、キャッチャーなのにサイン出すの下手過ぎ」
俺が笑いながらそう言うと、アヤは、
「基本、ピッチャーまかせだから」
そう言いながら、はにかんだ。俺も酔っていたのか、その、はにかんだ感じがたまらなかった。アヤと付き合ってみるのも良いかもしれない。
「二人でバッテリーでも組んでみるか?」
アヤは、
「ん? どゆ意味?」
キョトンとした顔でそう答えた。
「あぁ……、お前さ、サインは出すのも受けるのも下手なのね」
俺はそう言いながら、キュッとアヤを抱きしめた。
「ナイスキャッチ」
耳元で、アヤがささやいた。

2 件のコメント:

  1. そういうのそういうの~^^

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    1. >キム兄さん
      最近こういうの出してなかったんで、お待たせしましたw

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