2015年12月7日

時間にまつわる文化の違いへの入門書 『あなたはどれだけ待てますか - せっかち文化とのんびり文化の徹底比較』

世界には、今でも「時計時間」ではなく、「出来事時間」で生活がまわっている地域・文化がある。例えば、牛を畑に連れて行って働かせる。その牛が疲れて水を飲みたがる時間はだいたい同じなので、待ち合わせの時間を「牛が水を飲みに行くころ」といった風に設定するのだ。それより細かい設定は、「飲みに行く前」「飲んでいる間」「飲み終わり頃」となるが、いずれにしろかなりアバウトで、1時間や2時間のずれは当たり前。こういう生活もたまには良いかもしれないが、多くの日本人にとって長期間はもたないだろう。

こういった時間の流れ、時間のとらえ方、時間にまつわる作法やマナーなどは、国によっては日本と大きく違う。例えば、約束をして時間通りに来ることがマナー違反になる国もあり、ならば遅刻せずに早めに来るのが良いかというとそういうわけでもなく、少し遅れるくらいがちょうど良いそうだ。

この「時間」、単位できちんと測定できるようになったのが300年ほど前のことである。最初期の機械時計は14世紀頃にヨーロッパで作られたが、それには針も時刻表示もなかった。現在の時間を知るためではなく、定められた「祈りの時刻」に鐘を鳴らすためだけに生み出されたのだ。16世紀末になってガリレオが振り子の働きを発見し、17世紀半ばに振り子時計が開発された。


そうした「時間」に関する本書の著者はアメリカの大学教授で、一年間の休暇をブラジルで過ごすうちに「時間」と「文化」というものに惹きつけられ、それを研究の専門分野にすることになった。本書は「時間」にまつわる地域・文化の違いを研究したものを、一般向けに分かりやすく解説してある。学術的な言葉はほとんどないが、学問の世界への入門書(それも所々のジョークが面白い入門書)といった趣きがある。

残念なのは『あなたはどれだけ待てますか せっかち文化とのんびり文化の徹底比較』という邦題。いまひとつ興味を抱かせないヤボなタイトルである。絶版になってしまった原因はこのあたりにもありそうな気がする……。原題は『A GEOGRAPHY OF TIME』といたってシンプル。Geographyとは「地理学」のことで、そのまま訳せば「時間の地理学」といったところだろうか。

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