この作家は、ミステリとしての仕掛け、人物描写、社会問題の三つのバランスがうまくとれている。伏線回収と種明かし、人の織り成す喜怒哀楽、深刻なテーマへの問題提起とを、同時に味わえる贅沢な読書時間になる。
本書は特にテーマとして「贖罪」「更生」「少年法」を軸にしている。つい先日、少年Aが手記を出版したりホームページを作って有料メルマガを開始しようとしたり、少し前には女子高生コンクリート殺人事件の首謀者が恐喝相手に「俺はあの事件の首謀者だ」と言って脅しをかけるなど、触法少年を守るために声高に主張される「更生」というのは一体どんなものなのだろうと考えさせられることが多い。
主人公は28歳の男性で、4歳の娘がいる。妻は3年半前に中学生の男子3人組に殺された。事件から3年半後、娘と二人で一生懸命に生活している中で、3人組のうちの一人が殺害される。しかも、事件現場が自分の職場の近くであったため、警察からは疑いの目を向けられてしまう……。こうして物語はスタートし、退屈させられることなく一気にラストまで引っ張られた。
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