2016年2月17日

井上ひさしの「人をみる目」の温かさが伝わってくる 『東慶寺 花だより』


離婚を望むものの夫が許してくれない。そんな女たちが逃げてきて、寺の中に入るか、あるいはその手前で夫につかまったとしても身につけているものを境内に投げ込めば、駆け込みが成立する。そんな縁切り寺「東慶寺」に駆け込んできた女たちと、その夫や家族との人間物語。それを寺の隣に立つ宿に居候する「半人前の医者」兼「半人前の作家」の若者視点で描いてある。

連作短編集で、それぞれが短く読みやすい。爆笑するほどの滑稽さも、号泣するほどの悲哀もない。思わずクスリと笑ったり、時にじんわり目頭が熱くなったり、その程度であるが、だからこそ「ああ、そうそう。これが世の中、人の仲だよな」と思わされる。

井上ひさしの「人をみる目」の温かさを感じる一冊。

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