2016年2月15日

「こんな戦争、誰が始めた」と怒鳴って逝く人がいたことを忘れてはいけない 『十七歳の硫黄島‏』

「死んでね……。意味があるんでしょうかねえ。どうでしょうねえ。だけど、無意味にしたんじゃ、かわいそうですよね。それはできないでしょう。“おめえ、死んで、意味なかったなあ……”っていうのでは、酷いですよね。家族に対してもね。そして、どんな意味があったかというと……これは難しいんじゃないですか?
まぁ、(死んだ戦友たちに対しては)俺はこういう生き方しかできなかったんだ。勘弁してくれって言うだけです。これで許してくれ、これで精一杯なんだ、と」

これは著者の秋草鶴次氏がNHKスペシャルに登場した際、インタビューで答えたものである。オンエアはされなかったが、さらに秋草氏はこう続けたそうだ。
「どんな意味があったか、それは難しい。でもあの戦争からこちら六十年、この国は戦争をしないですんだのだから、おめえの死は無意味じゃねえ、と言ってやりたい」
本書は硫黄島での戦いに参加した秋草氏による体験記である。著者の筆力が巧みで、小説のようにページがすいすい進む。しかし、そこに描かれているのは戦場であり、多くはないが直接的でグロテスクな描写もあり、決して明るくなれるようなものではない。

冒頭で紹介したのは石田陽子氏による「おわりに」からの引用である。その後に、秋草氏の「謝辞」があるが、ここで語られる内容も心に訴えかけることが大きいので紹介する。
重傷を負った後、自決、あるいは他決で死んでいくものは「おっかさん」と絶叫した。負傷や病で苦しみ抜いて死んだ者からは「バカヤロー!」という叫びをよく聞いた。「こんな戦争、誰が始めた」と怒鳴る者もいた。
「こんな戦争」を再び繰り返さないために、思想や立場の違いに関係なく、多くの日本人に読んで欲しい。

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